大聖堂のコスモロジー―中世の聖なる空間を読む (講談社現代新書)

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  • 講談社 (1992年10月1日発売)
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フランスの大聖堂を中心に、ロマネスクからゴシックへというモードの変遷、クリュニー派とシトー派の論争、そして大聖堂自体を形作る宗教的・哲学的な秩序を通じて、高層の大聖堂が数多く建てられた中世のキリスト教信仰について学ぶ。


まずバシリカ式とコロンナ式という建築様式の対立があった。聖十字形で中央にドーム屋根を持つコロンナ式に対して、袖廊の付いた縦に長い十字形で、最奥の一点に視点が集中するバシリカ式が優勢になる。
すると今度は修道院に置かれた鐘楼が塔として発展していき、バシリカ式聖堂のもつ水平的な方向性と、塔建築がもつ垂直的な方向性がぶつかりあう。そもそも塔と聞けばバベルの塔を思い出すように、キリスト教とは相性が悪いはずなのだが、以降聖堂の屋根自体も技術の進歩によってどんどん高くなっていく。ゴシック大聖堂は新しく建てられたものほど尖塔が高くなっていて、バベってんだよなぁ確実に。
バシリカ式と塔が融合し高層化していくゴシック大聖堂に、今度はステンドグラスを用いた薔薇窓が登場する。薔薇窓は円形なので、垂直方向へ進化していたゴシック建築と相性が良いとは言えないものの、イタリアとフランスを中心に支持されていく。パノフスキーは、このようにゴシックと反ゴシックなものを組み合わせたのは「種々異なったものの調和」を目指した中世スコラ哲学の影響ではないかと指摘しているという。元々は「キリストの身体」を表していた教会建築が、哲学的な宇宙像を示すものになったのだ。
一番興味深かったのは、床にダイダロスの迷宮を模したモザイク画がある大聖堂の話。しかもそこに聖堂を建てた建築家のシルエットや名前を入れ込んでいるらしい。元はローマ時代に、中心にミノタウロスを描いた迷宮のモザイク画があり、一三世紀になってそれを踏襲しながら建築家の偉業を讃える意匠へと変わったらしい。子どもがミサ中に遊んでうるさいから消してしまったという例もあるらしく、かなり大きなものだとわかる。自らをダイダロスに擬した建築家たちの自負も面白いけど、それ以上に「神の国」であるはずの教会に人を惑わせる「迷宮」のデザインを、しかも思いっきりギリシャ神話由来のものを許していたのが面白い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2020年5月28日
読了日 : 2020年5月18日
本棚登録日 : 2020年5月28日

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