大学の生物科を卒業したあと埼玉の飯能にある中高一貫校で教職に就いた著者は、「生き物の死体を持っていくと喜ぶ変な先生」として生徒に知られていた。子どもたちが持ってきた死体を一緒に解剖し観察するうちに、いつしか周りにも骨格標本づくりが天才的に上手い子や虫捕り上手な子が集まってくる。生き物たちの不思議を通して子どもたちと触れ合った生物教師のエッセイ。
文章以上に著者自身による博物スケッチが魅力的。虫は苦手なのでゴキブリを扱ったパート3はキツかったものの、絵ならギリ薄目で乗り切れることがわかった。メスしかいないナナフシモドキの生殖の話はSFみたいで面白い。
クジラの耳骨を通して進化の歴史を辿るパート2も、小さな骨から壮大な物語が見えてくる研究の醍醐味が詰まっている。陸上の哺乳類では頭蓋骨と一体化している耳の骨が、海中の雑音をシャットアウトするために分離されたのがクジラの耳骨なのだとか。クジラとイルカには自前のノイズキャンセラーが付いているのだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
エッセイ
- 感想投稿日 : 2021年10月24日
- 読了日 : 2021年10月8日
- 本棚登録日 : 2021年10月24日
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