蒼路の旅人 (新潮文庫)

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本棚登録 : 3633
レビュー : 364
著者 :
wataruさん 小説   読み終わった 

守り人シリーズの大きな魅力のひとつは、凄腕の短槍使いバルサのアクションシーンとナユグ(地域によってナユーグル、ノユークとも)というこの世と重なって存在する精霊の世界によって引き起こされる不思議な現象の数々でしょう。さらに、児童文学でありながらファンの年齢層が広い理由には、登場人物の一人ひとりの人生が細かに設定されていることから滲み出るリアル感だと思います。

シリーズ全10巻のうち4巻目「虚空の旅人」と7巻目「蒼路の旅人」は、第1巻「精霊の守り人」に登場した新ヨゴ皇国の皇太子チャグムを主人公とするスピンオフのような作品です。バルサの不在、皇太子を主人公とするという事から、この2作は政治物としての色合いが強くなっています。
特に今回の「蒼路の旅人」は完全に政治物ですね。様々な人の思惑が複雑に絡み合い、これまでの「守り人」とは違った面白さがあります。しかも特筆すべきは、冒頭でも触れましたが、これが児童文学であるということでしょう。本当に分かりやすく書かれていました。

ただ、やはり不満の残る点もいくつかあります。「何か問題を解決するために苦難を乗り越える」というのが、どんな物語にも絶対に大切な要素だと思いますが、その点が薄かったような気がします。もちろんチャグムはあれこれと苦悩の連続ですが、終始、「そうは考えつつも行動を起こす期を待ち、とりあえずは流れに身を任せる」という姿勢だったと感じます。物語を読めば、それらの行動はその状況で出来る最善の選択だと、理解は出来るのですが……。
また、「蒼路の旅人」のトリガーとなる問題が「蒼路の旅人」内で解決されていない事も、読後の後味を悪くしています。これは、次の「天と地の守り人」に続くことを強く意識して書かれているからなのでしょうが、やはり、解決の糸口が僅かに見えたところで終わり、というのは何かもやもやが残ります。。

「蒼路の旅人」はシリーズを通した壮大なクライマックス「天と地の守り人」三部作へと続きます。良くも悪くも、「天と地の守り人・タルシュ帝国編」といった印象でした。

レビュー投稿日
2012年1月27日
読了日
2012年1月27日
本棚登録日
2012年1月21日
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