ある明治人の記録 改版 - 会津人柴五郎の遺書 (中公新書)

著者 :
制作 : 石光真人 
  • 中央公論新社 (2017年12月20日発売)
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 1971年の初版から改版も含めると60版になる、このようなロングセラーがあることを知らなかった。柴五郎は、会津藩士の子として生まれ、10歳の時に戊辰戦争が起こった。父や兄たちは戦場に向かった。そして祖母・母・姉妹(妹は7歳!)等は、会津の籠城戦前に自刃している。五郎は家系を残すため、それとは知らされず親戚に預けられていた。
 
 戊辰戦争の終結後、会津藩のみ処罰的ともいえる現在の青森県への移封がなされる。実際は流刑ともいうべきもので、生活は辛酸を極めた。「野垂れ死に」を期待するかのように。しかし武士の意地で、薩長を見返すために生きた。犬の肉を無理やり飲み下すというくだりでは、望月三起也「ワイルド7」で、飛葉が小便まみれの腐った肉を食うシーンを思い起こした。目的があるなら、何としてでも生きるのだ。
 
 そして現代と違って「自己責任」で片づけない、困窮している人がいれば助けるを是とする人たちの支援で、陸原幼年学校に入学を果たす。長州閥が幅を利かす陸軍で閑職に補されることもあったが、最後は大将まで昇進する。晩年、「近頃の軍人は、すぐ鉄砲を撃ちたがる、国の運命を賭ける戦というのは、そのようなものではない」と語っていた。昭和17年秋には既に「この争は負けです」とも。昭和20年12月没、享年87歳。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学・その他一般
感想投稿日 : 2020年10月22日
読了日 : 2020年10月22日
本棚登録日 : 2020年10月22日

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