美について (講談社現代新書 324)

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  • 講談社 (1973年6月20日発売)
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「美について」今道友信

人間の知的な省察が加わった場合とそうでない場合とでは、単なる風景に接しての美的体験であってもその内容が違ってくる。

知識をもって体験を立体的に構成できた時、作品を前にする体験は初めて真の芸術体験に高まる。

人間的なるものの体験を知的に理解できるようになっていなければ芸術の分析的な結果を総合して体験化していく事はできない。

一作品の理解は鑑賞者の人間体験の理解と相即している。

人間体験を深める為に芸術体験が役に立つ。

ごくありふれた観光の体験、また芸術作品との体験、生活環境への反省というような誰にでもありうる体験を通じて、美の思索は可能であると同時に、必要であり有益である。

美には感覚的に知覚される表面的な美もあるが、知性がなければ発見できない深い美しさがある。

人間は芸術によって自己の精神を高める事ができる。

人間として生きながらにして物的な世界を超越する可能性を精神に暗示しているものが芸術。

藝という字の語源は「ものを植える」という事であり、人間の精神において内的に成長していく価値体験を植え付ける技。
芸という字の語源は、「草を刈り取る」事であり、本来的な意味が変わってしまう。

真の芸術とは、存在するものに対する深い人格愛がなければ成立しない。ありとあらゆるものの良さを発見しようとする態度、世界のあらゆるものに対する精神の愛が作用している事を見抜く事。

育くみの心としての愛が芸術の源。愛こそが美しい。憎悪は破壊の槌であり、芸術に対する悪魔である。

芸術はただ遊びや趣味という段階に留まらず、本質的に宗教や道徳と並ぶ最高の営み。

精神の特殊な現象形態の一つである芸術は、哲学と宗教に次いで最高の段階に属している。

芸術の基本的な方向は人格の美に向けられている。

芸術は人格美において自己を完結せしめる。

今日の芸術は自らの努力によって自らが光と化するような仕事であり、これは芸術に留まらず、全ての営みについても言える。

人間の理想は真善美。真は論理学、善は倫理学、美は美学の課題。最高の理想を考える仕事は哲学の課題。

美は人間の知性の中に座を占め、知覚の対象の有無に関わらず存続する事を意味する。

美は感覚で感ぜられるに留まらず、理性によって発見されてくるもの。

美の位相がいくつかあって、それらは事物の局面においては存在せず、意識の位相に他ならない。

生きがいとは、与えられた所与としての生命を手段として、己がこの手段を捧げて悔いない目的を自ら見出さなければ決して生じない。

我々は義の人を賞賛し、善の人を賛嘆するが、それらの賞賛や賛嘆は人を動かす事はない。人を動かすのは輝き出てくる美しさだけ。美の人のみが力を呼ぶ。

最高価値としての美は、己をむなしゅうして人類の為にどんな小さな事でもよいから愛をもって成し遂げていこうとする希望に満ちた生き方の中に灯された輝き。

美は人生の希望であり、人格の光である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2018年5月31日
読了日 : 2018年5月31日
本棚登録日 : 2018年5月18日

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