シンプルな情熱 (ハヤカワepi文庫)

  • 早川書房 (2002年7月1日発売)
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本棚登録 : 561
感想 : 56
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とても短い小説なのですぐに読める。
内容もただ「恋」の話だから難しくもない。
文章もシンプル。
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原題は『Passion simple』

passionはもともと外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦難」「苦悩」を意味する語であり、Passionとpを大文字で書くとイエス・キリストの「受難」の意味になるとあとがきで初めて知った。
この作品は正しくPassionで、その様が簡潔な文章で綴られている。

じっくり向かうとノーベル文学賞で、表面的に流すとただの不倫話。
本場フランスでは賛否両論だったらしいが、それもよく分かる。
否定的な批評は"平板な文体"と言い、支持派は"平板なのではなく簡潔""極限まで無駄を省いているのだ。剥き出しなのだ"と言う。
私も支持派の意見に同意する。無駄を省いた語りであるからこそ本質が分かりやすく顕になっていると思う。

女性読者が圧倒的に多いと思うが、エルノーの元に届いた手紙は"胸の内に秘めていた自分の体験に言葉を与えてくれたことに感謝する"という男性からのものが多かったらしい。

私も正にそうだった。
エルノーと全く同じで驚くほどだった。
同じ気持ち、同じ感覚。
だから共感しかなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: フランス文学
感想投稿日 : 2023年1月24日
読了日 : 2023年1月24日
本棚登録日 : 2023年1月3日

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