2023年1月28日
-
キャプテンサンダーボルト
- 阿部和重
- 文藝春秋 / 2014年11月28日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
全然進まず途中で挫折しそう…と思った。
合作とか共作とかになると途端に伊坂さんの良さがなくなる。
普段の作品が10点だとしたら5点以下になる感じ。
まず最も顕著なのがテンポの悪さ。遅くて、のろのろ、だらだら、ぐだぐだ…。
テンポの良さが伊坂さんの良さなのに。
そしてユーモアにも欠ける。
東京大空襲の夜、東北に墜落したB29、そこで発生したウィルス、と書かれていたから絶対面白いと思ったのに!
前半がホントにつまらなくて参ってしまった。後半はスイスイ読めたけど想定内の展開。
伊坂さんらしくて面白くて良かったのは、預かった犬のポンセ。
"名前忘れたけど、昔の野球の外国人助っ人選手の名前でさ、巨人以外の"
試しにクロマティと呼んでみるとそっぽを向く(笑)
時々出てくるポンセの気持ちが伊坂さんぽい。
伊坂さんとはほぼ同年代だから、昔の野球選手とかよく分かってしまう。
2023年1月18日
-
シンプルな情熱 (ハヤカワepi文庫)
- アニー・エルノー
- 早川書房 / 2002年7月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
とても短い小説なのですぐに読める。
内容もただ「恋」の話だから難しくもない。
文章もシンプル。
.
原題は『Passion simple』
passionはもともと外部から被害を受けたときに生じる「苦しみ」「苦難」「苦悩」を意味する語であり、Passionとpを大文字で書くとイエス・キリストの「受難」の意味になるとあとがきで初めて知った。
この作品は正しくPassionで、その様が簡潔な文章で綴られている。
じっくり向かうとノーベル文学賞で、表面的に流すとただの不倫話。
本場フランスでは賛否両論だったらしいが、それもよく分かる。
否定的な批評は"平板な文体"と言い、支持派は"平板なのではなく簡潔""極限まで無駄を省いているのだ。剥き出しなのだ"と言う。
私も支持派の意見に同意する。無駄を省いた語りであるからこそ本質が分かりやすく顕になっていると思う。
女性読者が圧倒的に多いと思うが、エルノーの元に届いた手紙は"胸の内に秘めていた自分の体験に言葉を与えてくれたことに感謝する"という男性からのものが多かったらしい。
私も正にそうだった。
エルノーと全く同じで驚くほどだった。
同じ気持ち、同じ感覚。
だから共感しかなかった。
2023年1月24日
-
クジラアタマの王様 (新潮文庫)
- 伊坂幸太郎
- 新潮社 / 2022年6月27日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
現実と夢の中、2つの世界が描かれるタイプの話でサクッと読める。
最近は伊坂さんの2010年前後の作品を読んでいたので、少し物足りなくも感じた。
遊びの会話や描写が少ない感じ。
でも「小説の中に、作品の一部としてコミックパートが含まれる構造」という新しい小説に挑戦していて、凄いなぁと思う。
2023年1月3日
車が語り手で、可愛くって面白くて一気読み。
「緑デミ」って呼ばれる語り手のデミオと他の車たちの会話が楽しい!
びっくりしてワイパー動きそうとか、廃車の心配とか、細かい設定もリアルだし。
車は大事に乗ってあげなきゃって気になります。
2023年1月2日
-
残り全部バケーション
- 伊坂幸太郎
- 集英社 / 2012年12月5日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
すごく良かった。
すごく好き。
伊坂さんらしい、裏家業の善人による人助け。
2022年12月30日
-
モダンタイムス 特別版 (Morning NOVELS)
- 伊坂幸太郎
- 講談社 / 2008年10月15日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
以前にも読んだものを挿画付きで再読。
かなり覚えてたけど楽しく読めた。
ー勇気はあるか?
ー実家に忘れてきました。
伊坂さんのこういうのいいよねぇ。
くすくすって笑っちゃう会話が伊坂作品の骨だよなぁ。そこに本質を折り込むタイプ。
伊坂さんの小説を読んでいると、何故だか現実の日常を頑張れる気になる。うまく言えないけど「大したことじゃない」って気になるというか「別にいいじゃん、大丈夫だよ」って気になる。
笑い飛ばす力っていうか、なんかそういう感じ。
伊坂さんの小説の中の人たちはみんな陽だまりみたい。
表紙の挿画を見て浦沢さんだと思ってたら違った(浦沢直樹さん好き)
2022年12月29日
-
ポラリスが降り注ぐ夜 (単行本)
- 李琴峰
- 筑摩書房 / 2020年2月28日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
新宿二丁目のレズビアンバー「ポラリス」に訪れる様々な人たちの話。
私は性の違和感を持ったことがないので、違和感を持って生まれた人の大変さは自分なら耐えられないだろうと思う。自分自身の問題としても大変なのに社会とも闘わなくてはいけないなんて、ハード過ぎる。
私は人間というカテゴリーでしか見ないので、そういうのは気にしたことがない。セクシャルマイノリティより人間としての性格の方が私にはずっと重きがある。良い人か良い人じゃないかの方がずっと大切なこと。
あまり知識がないので色々な違いとか悩みとか、とても興味深かった。
2022年12月21日
-
嘘の木 (創元推理文庫 Mハ 27-1)
- フランシス・ハーディング
- 東京創元社 / 2022年5月18日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
舞台は19世紀イギリス。価値観や風俗が現在と異なるのでタイムスリップしたような気分になれます。
前半は男尊女卑の甚だしさにちょっと辟易しましたが、半ばから物語が動き出してそこからは面白くて一気に読んでしまいました。
SFでありミステリーであり冒険であり、ストーリーの面白さだけでなく文学としても素晴らしく、傑作と謳われるのに納得しました。
2022年11月27日
-
Ank : a mirroring ape (講談社文庫)
- 佐藤究
- 講談社 / 2019年9月13日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
佐藤究さんは私が激推しの作家さん。
これもすごく面白くて、止められないけど終わってしまうのもイヤ、と葛藤しながら読みました(苦笑)
佐藤さんの小説が面白いのは専門的な知識やデータの多さにあります。佐藤亜紀さんに近い面白さ。
加えてアクション映画のようなスピード感とテンポの良さと、SFミステリーなどの要素。
どうなるんだろう、とページを捲る手が止められなくなる面白さ。
さらに、神話や伝承の古代をうまく取り入れているところもたまらない。
あと、人種が幅広いところも良いです。スケールが広がります。
そして、深いテーマ性がきちんとあって読む側に問うてくるところ。考えさせられるところが良いです。
今回は人間について。
明確な深いテーマ性は小説を骨太にします。表面的な小説はやっぱり薄っぺらい。
とても良いフレーズがあったので抜粋。
『友好度は知能と比例する』
本当にその通りだと思う。
だから人間は争ってはいけないのです。思い遣れるのが人間です。
2022年11月17日
最初、高校生が主人公というのがキツくて(鬱陶しい女子高生の登場人物がキツくて)全然進まなかったけど、1/3過ぎくらいから物語が動き始めてそこからはあっという間に読めました。
これはドラマにすると良いと思う。ドラマの方が絶対面白いと思う。役者の良さで面白くなるし、女子高生も友人も鬱陶しくなくなると思う。
父親役4人の俳優とクールな息子役の俳優、誰がいいかな〜と妄想。
とても良かったです。
さすが元記者という作品でした。
人生を春夏秋冬のように四つにして、四編で成り立っています。どれも良い作品でした。
一つ目の主人公の父の満洲の話と三つ目のコソボ紛争を書いたものが良かったです。
二つ目と四つ目は虫が出てくるのでそれが私はダメでした。内容はどちらも良いのですが…。
2022年10月30日
珍しく進まなかった。珍しく面白くなかった。
何だろうなぁ、伊坂さんぽくないなぁと思っていたら、あとがきに漫画と対となる作品だと書いてあって納得した。
らしくないキーワードも漫画家さんのアイデアだと分かってスッキリした。
間違ってもこの本から伊坂さんを読み始めてはいけない。
-
バイバイ、ブラックバード
- 伊坂幸太郎
- 双葉社 / 2010年6月30日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
不思議な小説だった。
内容も展開も予測不可能で「?」のまま進み、終わる。
でも、訳がわからないというのではなく、良い話で、伝えたいことは伝わる。うまく言えないけど、優しい気持ちになる。
主人公が星野一彦で、彼を監視する大柄な女性が繭美で、5人の星野君の彼女たちの名前は和風名月が使われているのでそこに暗喩や何かのヒントや意味や意図があるのかな〜。
例えば繭は中の動物を包み込んで保護するもの。監視と言いながら星野君を助けて守る役割を示唆してる。星野君より大きいところとか。
星と月にも何かある気がするけど無知だからパッと結びつかない。
とにかく、破茶滅茶だけど意味があって、伊坂さんらしい展開で、面白かったです。
2022年9月19日
-
アイネクライネナハトムジーク
- 伊坂幸太郎
- 幻冬舎 / 2014年9月26日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
斉藤和義さんとの対談のきっかけとなったということで読みました。
最近の伊坂幸太郎作品からするとごちゃごちゃした印象。複数人の繋がりや時間の行き来が絡み過ぎて疲れました。
これもまた面白かったな〜。
ドラマか映画になりそう。
書き手が主導権を持って口出ししながら物語が進んでいくタイプ。伊坂さんこれ得意だよなぁ。
今回の作中作品はヴィクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」
2022年9月11日
すごくすごく良かった。
全体的に「わかるなぁ〜」って感じで、ここ数年の2019〜2022年を舞台にしていて身近な感じも珍しくて良かった。コラムみたいな感じ。
あと、福岡出身の主人公が富山で暮らすという地方感も良かった。富山が識れて面白かった。
『まっとうな人生』は『逃亡くそたわけ』の続編で、実際に主人公の時間が経過して今現在という設定になっている。
『逃亡くそたわけ』の内容はすっかり忘れたけど、問題なく読める。
大事なのは時間の経過ということであって、内容ではない。
『逃亡くそたわけ』から『まっとうな人生』までの時間経過はそのまま私を含む全ての人に経過した時間で、
だから『逃亡くそたわけ』を読んだ時の私が若いゆえに共感し、月日を経て年をとった私が年をとったからこそ『まっとうな人生』に共感する。
その事実が、すごいなと思う。
特にp64〜73の(5) が良かった。
全文引用して紹介したいくらい、共感した。
「そうなんだよ」ってなった。
そして、それは、やっぱり時間が経って私も老いたから分かるんだとも思った。
昔の自分を思い出した。
20代の頃、私は家族や親しい人の死を体験したくないから誰よりも先に死にたいとしょっちゅう考えていて、そんな時に父が「若いと感度が高いからな、怖いよな。でも俺もお母さんもまだまだ死なないし、まぁもうちょっと待てば今度はお前が年をとる。そうすると良くも悪くも感度は鈍くなるんだよ。他人の死なんて大した事じゃなくなる。それでそうやってどんどん鈍くなって自分の死を迎えるんだよ。人間はそういう風にできてるんだ。だから今死ぬ必要はない。大丈夫」って。私は「鈍感になるなんて耐えられない!」ってなったけど、結局父の言う通り鈍感になった。
人生ってすごいなとしみじみ思う。
2022年9月17日
-
星を掬う (単行本)
- 町田そのこ
- 中央公論新社 / 2021年10月18日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
本を読んで号泣したのはいつぶりだろう。
.
.
町田そのこさんはブクログのランキングでずっと1位になっていて気になっていました。
その時に見たのは別の本だったけど、町田さんということでこの本を読んでみました。
止められなくて一気読み。
伊坂幸太郎さんや恒川光太郎さんと同じエンターテイメント系の別のジャンルという感じ。
文学系じゃなくて物語系で、映画やドラマを見るように読める本です。
ドラマ化されそうだなぁと思いました。
でも、映画やドラマになったら、他の小説の映像化と同じように本から受ける感動は絶対になくなるとも思いました。
小説だから得られる効果が絶対にあるのです。
行間を読むとよく言うけれど、どんなに物語が素晴らしくてもやっぱりそれは文章だから生まれている部分があって、台詞や映像では補えない言葉のちからというものがあります。
この本は正しくそういう本で、脚本として物語としても素晴らしいけれど、やっぱり小説だからこそ胸にぐっとくるのだと思います。
なるほど、何週連続1位、納得しました。
内容については色々な要素が盛り沢山で一言では言えないから何も書きません。
2022年9月4日
4篇が収められていて、表題作の「渇水」は良かったです。
言葉で言い表せない漠然とした感情や感覚をうまく表現しているように感じました。
好き嫌いや良し悪しはさておき、全篇に作者独自の感性や世界観が感じられました。
モヤッとしてスッキリしないところ、救いとか解決とかそういうのが全くないのが個性というか。
誰かの人生のほんの少しを切り取って、ただ見せましたという感じ。
ありそうでないなぁと思いました。
2022年10月8日
『ギフテッド』鈴木涼美
才能はあると思うし、よく書けているとも思うし、テーマもそれを表現する設定や描写も分かる。
でも、表面的な技法とか暗喩とかはあるけれど、心に響く重みや深い意味が伝わらず、浅くて軽い。
小手先感というか、何となくいい印象が持てなかった。
最後の方は読む気も失せて、パラパラとページを捲って流し読み。
賞の候補や受賞には色々な思惑や枠があると思う。作品の方向性や話題性や著者の個性や学者枠やetc...
慶應大学在学中にAV女優でデビューして、その後東大の大学院という経歴が物を言っているとしか思えなかった。
もちろん私はAVや風俗に偏見はないし、そちら側を知らないわけでもないです。
2022年8月13日
帯がいい。
《 人間はおもしろい。だが、飼ってはならぬ。》
どんな話だろうとワクワクする。
恒川作品はどれも面白いから安心して手に取れる。
いくつかの短篇から成っていて、共通の妖怪的なもので繋がっている。
現代から過去、異国、そして異世界と物語は繋がっていく。
☀︎
最初は面白く読んでいたけど、徐々にシリアスになって、「人間とは」という問いを何度も突きつけられて、切なくなった。
最初と最後でこれほど感情に変化を齎す作品はない。
その発想力と構成と試みがすごいと思う。
また恒川さんにやられたって感じで脱帽です。
2022年8月11日
-
北帰行 (1976年)
- 外岡秀俊
- 河出書房新社 / -
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
やっと読み終えた。旅行に行ったりして気持ちが読書に向かわず、かなり時間がかかった。
石川啄木を絡めた構成で、興味深かった。丁寧さをすごく感じた。文章が丁寧だから読むのも必然ゆっくりになった。とろりとした液体のような印象。
時代は戦後30年くらいで、その古い感覚も良かった。
2022年8月7日
-
トワイライト・シャッフル
- 乙川優三郎
- 新潮社 / 2014年6月20日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
短篇集で読みやすかった。
どの作品も正直で、気取ったところがなくて、すごく良かった。
女性が靭く、男性が最低なところも良い(苦笑)
乙川さんの小説はトーンが好き。
☀︎
乙川作品によく出てくる千葉県の御宿町は幼少から大学生まで頻繁に訪れていた場所で、海の家も手伝っていたし、人も場所も言葉も私にとっては馴染み深く、読んでいて変な気持ちになります。
2022年6月11日