首相官邸で働いて初めてわかったこと (朝日新書)

著者 :
  • 朝日新聞出版 (2013年3月13日発売)
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感想 : 25
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 先の衆院選(2017.10.22)の前にJ-Wave(Jam the World)に出演し、有権者としての立場、責任を分かりやすく解説しており、著者の考え方をもう一度確認したいと思い読んでみた。

 ラジオ放送で語っていたことが本書にも書かれていた。

「市民の側にも≪自分たちが選んだ政治家を支える意識≫が必要だろう。投票したらオシマイ、あとは文句を言う対象、というのではなく、投票した責任で、任期いっぱい支え続けること。粘り強く叱咤し、支え育てていく努力をしなければいけないのではないか。」

「自分たちがたった1年前に選んだ政権が、ヨチヨチ歩きで苦闘しているのを、助けようとも育てようともしないで、また次のヒーロー願望かい?そんな”お任せ民主主義”を、一体いつまで続けるつもりなんだ!」

 一票を投じただけでは終わりではないという考えを持って、先の選挙には臨めた。

 選挙前に読了しようと思っていたが、後半は3.11の対応や、菅退陣後の野田政権での話などが多く、それなりに面白くはあったが、いまさら過去の振り返りでもなかろうとペースが落ちてしまった。

 それでも、3.11での原発への対応は、教訓として将来しっかり活かしていくべき話が多いし、原発そのものや、危機対応について大いなる問題を孕んでいた(現在も、孕んでいる)ということがよく判る。
 そうした諸問題も、国家と国民との間の意志疎通のツールが機能していないという点を、メディアに属する民間人の視点で赤裸々に描いている点も興味深い。伝えるべきメディア(マスコミ)にも問題はあるが、伝えようとする為政者側にも問題ありという点も分かりやすく記されている。曰く、総理側近たちが自分たちの本丸を守ろうとするが故に築いてしまう防火壁のような情報遮断であり(出る方、入る方共に)、あるいは、官僚たちの
”伝わらなさこそが「上手」という価値観”という摩訶不思議な作文法等々。昔からよく言われていることだが、実際に政権内部に飛び込んだ民間人の視点から改めて語られる新鮮味があった。

 仮にこうした問題点がクリアにされたとしても残る問題として、やはり原発の存在だろう。
 原発そのものの安全性が確保されたとしても、究極、それをコントロールする人間の叡智に全てはかかっていることは、過去も未来も変わりないということは、肝に銘じておくべきことだ。

 この例えが見事だった;

「皆が原発という車の安全性の話ばかりをして、運転手の力量の話をしていない。」

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2017年10月30日
読了日 : 2017年10月30日
本棚登録日 : 2017年10月19日

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