よく書けている一冊(というとエラそうだけど)。 宮崎駿本人、ジブリ側に確認したわけでもなく、著者の思い入れ、片思いな考察なのが残念ではあるが(いずれ対談とかインタビューして確認してほしい。宮崎駿が応えるかどうか分からないけど)、宮崎駿の作品に込められた「真情」(作品の意図、込められた思いを本書では、こう記す)が、自然との一体感というか、五行説に代表される東洋的な思想に根差しているというのは、ジブリ作品のファンとしても嬉しい考察。手塚治虫の作品にも通じるものがある。
でも、その「真情」が作品の裏にこっそり隠されているなら、こうして解説されて理解するのもいかがなものかという気もする。美しい自然の景色や、生き物のありのままの姿を見たとき、ただただ感動することがあるが、ジブリ作品もそうして“感じる”ものでいいんじゃないかな。そうして、何気なく見てるうちに、知らず知らずのうちに何かを受け取り、人として成長していれば、それが宮崎駿が作品の理想形とする“入口は広く低く、出口は高く浄化されていなければならない”を体験できたことになるのだと思う。
作品の構図、モチーフにいろんな隠し絵的な意図が含まれていると紐解くけど(過去の作品へのオマージュだったり、絵画のモチーフを取り入れる等)、それは宮崎駿に限らず、古今東西いろんな映画監督もやってきたことなので、それを“暗号”として詳らかに拾ってくところはちょいと余計だったかな。薀蓄としては面白いけど。
ともかく好きな映画を通して、いろんなことへ興味を持って、自分の知識や思考を広げていっている著者の姿勢は素晴らしと思う。彼自身が宮崎作品の広く低い入口から入って、高く浄化された好例なのかもしれない(人として、どれだけ成長してるのかは見えないけど)。
旅の道中、軽くさっと読むには良い本でした@電子書籍
- 感想投稿日 : 2014年7月4日
- 読了日 : 2014年6月29日
- 本棚登録日 : 2014年6月29日
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