AMAZONで三蔵法師に関する書籍を検索していたら、こんな古い本が安値で出ていた。いつのものかと見ると、
・昭和27年(1952年)第1刷発行
・昭和33年(1958年)第12刷発行
岩波新書であるがオビがしっかり残っていて、それには定価が「¥100」とゴシック体で印刷されていた。また、漢字は旧字体で、まるで台湾か香港で用いられている繁体字を見ているようである。例えば、
史実→史實、発行→發行、精励→精勵、礼拝→禮拝
といった具合である。
玄奘は帰国して間もなく、その旅行中の見聞を詳しく書いた「大塔西域記」を著した。それをもとに弟子の慧立が玄奘没後に「大慈恩寺三蔵法師傳」を編んでおり、そのうちの前半部分の現代語訳が講談社学術文庫から出ている。既にこれは読んでいるので、今回の書はこれとの比較になる。
慧立版は非常に詳細で注釈も多く原本に忠実なのであろうが、国名や人名が頻出し煩雑で大変読みづらい印象をもった。こちら前嶋氏の書は口語的で、サブタイトルに「史實西遊記」としているように、物語風に書きすすめられており、旧漢字を除けば楽しく読むことができた。慧立のよりもずっと読み易かった。現代の漢字遣いにすれば十分に今の若い人たちにも読んでもらえると思う。
読み終えてみると、玄奘という人の意志の強さに改めて感動した。かつてこんなにも意志が強く、行動的で頭脳明晰な人が存在したということに驚く。
本書には中国の概念図1ページ分のほか、インドにおける玄奘の行程図が折りたたみで1枚あるだけだ。紀行文の要素が強いだけに、地図がないのが今一つ物足りなかった。
- 感想投稿日 : 2012年5月11日
- 読了日 : 2012年5月11日
- 本棚登録日 : 2012年5月11日
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