洪秀全と太平天国 (岩波現代文庫 学術 59)

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  • 岩波書店 (2001年7月16日発売)
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 アヘン戦争から約10年後に起きた「太平天国の乱」は、19世紀の初めの14年間、洪秀全がもとはキリスト教を独自に解釈して「拝上帝教」を創始したことに始まる。始めは新興宗教といったところだったが、その宗教運動が革命運動へと変節していく。

 「太平天国」とは聞いたことはあるものの、一体どんなものか良く知らなかった。最初はカトリックだったのに途中変節していく。それは自分の理想を追い求め、ユートピアを建設しようとせんがための必然であったのだろう。こういうプロセスは現代でもあちこちに見られる新興宗教が成長していく過程と同じではないかと思う。貧困層を巻き込んで大規模な組織を作り、軍事部門まで持つに至り、すっかり清朝に対抗する革命勢力になった。

 しかし洪秀全が天父として祭り上げられ後宮に引きこもってしまい、表舞台に出てこなくなる。これでは民衆の信頼は崩れてしまうのも当然と言える。地上に天国を作るとした当初の発想は良かったが、実際には最後に自分だけちょっといい思いをした。だからたった14年で太平天国の世界は消滅した。

 索引が人名と事項に分けられており引きやすかった。写真は所々に使用されており、興味深い場所が写っていて参考になった。ただ、地図をもっとふんだんに利用して説明してくれれば、さらに理解が深まるものと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 世界史
感想投稿日 : 2012年5月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年12月5日

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