聊斎志異の怪 (角川ソフィア文庫)

  • 角川書店 (2004年8月25日発売)
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感想 : 5
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 お昼の12時からBSで中国のドラマ「画皮(がひ)」を毎日放送しているが、このホラーの原作が「聊斎志異」である。
 ドラマはキツネが人間の美女に化け、自らの美しさを保つために次々と人間の心臓を食らう。それはかつて罠にかかって苦しんでいたキツネ(自分)を助けてくれた男に恋をしたためであった。

 「聊斎志異の怪」は原作「聊斎志異」からの抜粋であるためか、ドラマ「画皮」の原作は見当たらなかった。本書の原作本である「聊斎志異」には当然入っているのであろうが、ドラマにまでなるような作品を「聊斎志異の怪」では、訳者の志村氏はなぜ取り上げなかったのだろうか。原作は400編を超す世界最大の怪異譚アンソロジーといわれるそうだが、その中から約40編を抜粋した短編集が「聊斎志異の怪」である。読んで面白いものと、映像にしたときに楽しめるものとは異なるのかもしれない。

 その中で気付いたことは、中国の怪奇ものには「お色気もの」が多いということである。キツネの妖怪が人間の若者に恋をするとか、妻にした女が実は妖怪であったとか、夜中に布団の中に潜り込んできた美女は妖怪だったなどという展開が多い。

 巻末に附録として、芥川龍之介と太宰治が「聊斎志異」をベースに書いたという怪談を原作とともに掲載しているが、どれも原作より芥川・太宰のほうが面白いと思った。彼らも原作を凌ぐというつもりで書いたであろうし、支那の人たちにも読んでもらいたいと書いているほどだから、自信があったに相違ない。

 結局、私はこの3編が中で最も面白いと思えた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国文学
感想投稿日 : 2012年7月31日
読了日 : 2012年7月31日
本棚登録日 : 2012年7月12日

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