孫文や辛亥革命について著した著作は数多あるが、本書は孫文の身にスポットを当て生涯を忠実に辿った伝記であるといえるだろう。死を前にして「革命いまだ成らず」と遺訓し、後の革命の完成を民衆に託したといわれるが果たしてどうだろうか。眉唾ものだと私は思う。後世の人たちの創作ではないのか。
孫文は理想主義者であったと思う。「建国方略」や「国家建設」などを著して世界中で最も理想的な民主国家を目指している。孫文は建国半ばで亡くなったが、いまだその理想国家は実現していない。現在の政権もその理想には程遠いにもかかわらず孫文を「革命の父」と崇めているのは面白い現象だ。孫文が建設しようとした「世界で最も新しい、最も進歩した国家」の骨幹を要約すると、
① 独特な政治体制
② 豊かな国家経済
③ 漸進的な土地改革
の3点になるという。なんとなく現在の中国で実現されつつあるように見えるが、それぞれ意味合いが違っているようだ。
また孫文はたびたび来日し日本人からも少なからず支援を受けたことはつとに知られているが、逆に日本政府は冷たかったこともあってか本書では日本との関係についてはほとんど触れていない。これについては別に詳細な本が各種出版されているのでそちらを参照することとしたい。
孫文が亡くなるところで本書もきっちりと筆を止め、その後については語っていない所が潔く好感が持てる。大まかに孫文の一生を知るには良書と思った。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
中国の歴史
- 感想投稿日 : 2012年10月11日
- 読了日 : 2012年10月11日
- 本棚登録日 : 2011年12月10日
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