中国の作家「蒲松齢」が書いた幻想的な話を集めた短編集。
清の時代、1640年~1715年の間にかなり長いスパンをかけて執筆されたらしい。
映画好きな人にとっては「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」の原作となった短編が収録されていることでも有名なのかもしれない。
ちなみに「聊斎志異」は「りょうさいしい」、「蒲松齢」は「ほしょうれい」と読む。
ネットで色々と検索していると、梨木果歩の「家守奇譚」が好きな人であれば「聊斎志異」も好きになれる、という書き込みを読み、興味を持った。
さて、その「家守奇譚」と似ているか、と言えば、似ているとも言えるし、全然違うとも言えるかと思う。
日本と中国という国家や民族の違い、書かれた時代の違いなどもあるのだろうが、「家守奇譚」はきちんとした作品の体を成しているのに対し、「聊斎志異」はどちらかというと、様々な話を書きとめておこう、という一種メモ的な感触を受けた。
だからといってダメだとか、つまらないとかいうことではないのだが。
良くいえば非常にスピーディに、悪くいえばディティールを全く無視して物語は進む。
とにかく物語の進み具合が早いのだ。
ちょっと1行読み飛ばしただけで前後の内容が繋がらなくなる、ってのは少し言い過ぎかもしれないが、トントントンと進んでいる。
つまりトントントンと人が死に、人が生き返り、キツネが化け、幽鬼が闊歩し、現実とあの世が交差する。
その現実とあの世の交差が当たり前に展開されていくのが心地よい。
この点などは「家守奇譚」や川上弘美作品にも通じるものがあるように思える。
というよりも、もしかしたら多くの不思議な作品の原典として位置している作品なのかも知れない。
不思議な話だけではなく、中には寓話的なもの、現実をそのまま描写したものもある。
また、短いもので2ページ、長いものだと数十ページにわたる作品もある。
魑魅魍魎や幽鬼だけでなく、人間そのものの怖さや可笑しさ、不思議さを語ってもいる。
因果の強い話もあれば、因果の全くないのにどうして? と思える作品もある。
泣ける作品もあれば、心底怖い作品もある。
とにかく色々な作品が収められているが、バラバラな印象はなく、きちんと一本の線、一つの色で整えられている。
それにしても、いとも簡単に男と女が夜を共にするなぁ……。
男なんか奥さんがいても、相手が狐が化けた女だとしても、「美人であればまぁいいか」ってな感じで夜を共にする。
当時の中国ってそんな感じだったのだろうか。
まぁいいけど……。
上巻を読み終わって、いま下巻を読んでいる途中だが、たぶん感想はそれほどには変わらないと思う。
現在の人にとっては、少し素朴すぎて刺激が足りないと思われるかも知れないが、一読してみる価値はあると思う。
450頁程のちょっと厚めの本ながら、夢中になって一気に読み終えてしまった。
- 感想投稿日 : 2018年1月4日
- 読了日 : 2022年11月24日
- 本棚登録日 : 2018年1月3日
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