俺俺 (新潮文庫)

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本棚登録 : 540
レビュー : 95
著者 :
yamada3desuさん 星野智幸   未設定

 読み終わった後に、亀梨和也が33人役を演じた映画の原作だったことを知る。
 映画の紹介をテレビで観た時はコメディというか、一種のスラップスティック的な内容かと思ったのだが、実際に原作である当書を読んでみると全然違った。
 自分と同じ自分が増殖していって、最後は削除しあうという内容なのだけれど、決してSFでもなければ、コメディでもスラップスティックでもなく、これはホラーだ。
 あるいは、自分が増殖していく世界を、単に誰かの精神世界内の話だと考えれば、全然違う世界も見えてくる。
 自分が増殖するといっても、それはドッペルゲンガー的な現象ではなく、まさに自分自身が増殖していくのだ。
 そしてラスト近くになって自分は自分を削除していく。
 このラストのカニバリズムの考え方は、安部公房の「自己犠牲」を思い出させてくれる。
 まさに「自己」を「犠牲」にして初めて見えてくる世界もある。
 結局、「自己」なんてのは相関対象である他者がいてこそ確立されるものであり、相関対象がすべて「自己」になってしまっても、結局それは「絶対的」な「自己」にはなりえない。
「自己」なんてのはそれほどに脆弱なものなのかも知れない。
「自分探し」とか何とか言って「現実逃避」するような甘ったれた人間がこの本を読んだら、耳が痛くて逃げ出したくなるだろう。

レビュー投稿日
2018年1月4日
本棚登録日
2018年1月4日
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