Running Pictures: 伊藤計劃映画時評集1 (ハヤカワ文庫 JA イ 7-4)
- 早川書房 (2013年1月25日発売)
伊藤計劃三冊目。
デビュー前に「スプークテール」という著者自身が運営していたウェブ・サイトにアップされた映画に関するレビュー全51作をまとめたもの(「今月のまとめ」としてまとめて紹介された作品も勘定にいれた)。
僕自身はそれほどに映画に詳しくはなく、かといって全然見ないわけでもない、まぁそこそこ映画好きな人間、ってところだろうか。
本書に掲載されている51作品のうち、22作品は劇場、あるいはDVD等で鑑賞済。
決して多い数字ではないだろうけれど、「映画に全然興味ないもんね」と胸を張って言える(?)には多い数字だろう。
僕としては、映画のレビューを読みたい、というよりも、あれだけの面白い作品を作り上げることが出来た人間が、どんな映画を観て、どんな感想を抱いたのか、に興味があった。
なるほど、と思ったのは、物語の流れだけでなく、一つ一つのカット割り、場面構成、オブジェ、建物、シーン全体に漂う雰囲気、そういったものにかなり強い視点を当てて映画を観ているなぁ、ということ。
そういった本流(物語)以外の、本流を支えている重要な要素にきちんと目配りが出来る、ということが彼の小説世界を支えている要因の一つなのかも知れないなぁ、と思った。
そういえば彼は武蔵野美術大学の出身。
だから美術的な要素に神経が向かうのかも知れない。
ちなみに武蔵野美術大学の少し東には僕が卒業した中学校が、少し西には僕が卒業した小学校と高校があり、昔はよくこの美大の文化祭に遊びにいっていた(こう書くと、ネットで検索すればすぐに「あ、この学校か」と判ってしまうだろうなぁ)。
映画レビューにあまり視点を置かずに読み進めてはみたものの、何作かはぜひ見てみたい作品があった。
1998年~2000年にかけて上映された映画が紹介されているので、今ではDVDやブルー・レイで観ることになるのだろうが、伊藤計劃氏が語っている「ここでやっているのは映画批評じゃなく、読んでくれた人を映画館へ誘導すること」という彼の目標は、少なくとも僕に関しては達成されている。
映画ファンがこの本をどう読むのか、また伊藤計劃ファンがこの本をどう読むのか、僕には想像出来ないが、そこそこ映画ファンであり、遅まきながら最近やっと伊藤計劃ファンになった僕は、予想以上に面白く読み進めることが出来た。
- 感想投稿日 : 2018年1月4日
- 読了日 : 2022年11月24日
- 本棚登録日 : 2018年1月2日
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