堕天使殺人事件 (角川文庫)

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感想 : 7
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二階堂黎人,芦部拓らの「新世紀謎倶楽部」によるリレー小説。北海道・小樽を舞台に繰り広げられる猟奇殺人。ウエディングドレスを着せた死体を日本各地にばらまいた「堕天使」の正体は誰か?
「はじめに」によると,ルールとしては(1)全体での打合せはしない,(2)質問禁止,(3)あとあとを考えない無責任なストーリー展開は許さない,といったもの。
しかし,できあがったものは,荒唐無稽なバカミス。こういった企画物,リレー小説の宿命かもしれないが,バカさ満点である。
戦犯というか,流れを変えてしまったのは三人目の北森鴻だろう。真言立川流やら西郷隆盛復活などの話を混ぜ込んでしまったがために,話の流れが一気にバカミスっぽくなってしまった。あとの人も悪乗りして,アージニャー・チャクラだとか,タントラやらカーギュー派がどうしたなどの設定を盛り込みだす。さすが,サービス精神旺盛な北森鴻というところだが,広げすぎた風呂敷を最後の解決編で,芦部拓が「この事件全体に神秘のベールをかけてみせただけのことだ」と関係ないことにしてしまう。すごい,バカすぎる。
各作家が,自分の地元を舞台にしたり,自分のキャラクターを登場させたのも,バカミスっぽさを増長させている。7人目の西澤保彦が,巻末の各人が解決を予想する「わたしはこう予想した」で,「超能力を駆使して事件を解決する(そうでもしないと,終わりそうな気がしなかった。)」と書いているように,読んでいる人も,「どうやって終わらせる気だ?」と思いながら読むことになるだろう(結局,芦部拓は,いくつかの伏線を「ミスディレクションだ」で終わらせてしまったのだが…。)
とはいえ,最後に芦部拓を持ってきたのは,ある意味正解だった。綾辻行人なんかを持ってきていたら,終わらせることができず,企画が頓挫していただろう。芦部拓らしく,割り切るところは割り切って,とりあえず終わらせてしまった。これができるのも才能である。この解決編もバカさ満載。多くのリレー作家が「どうやって解決するんだ?」と悩んだ密室のトリックは,「傷口を接着剤のようなもので癒合させていたが,その効力が切れ傷口が開いて死に至った」という形で決着をつけた。作中で真犯人に「こんなおバカな密室トリックって聞いたことないわ。森江さん,あなた本気でそんなことが可能だと思っているの?」とほとんどの読者が思うであろう,感想を代弁させている。これに対する探偵役の森江の回答は「医学にかかわるマッドな人たちが黒幕だとすれば,この先端医療的トリックも現実味を帯びてくるとは思いませんか」というもの。いやいや,思いませんよ。
で,真犯人は被害者だと思われていた秋元慶子。秋元慶子は,みやこ新聞の記者である「折原けい」の名を偽って情報収集などを行い,黒幕である中室生寺博士や加野次官の計画を利用して猟奇殺人を演出していたのだ。うん,バカ。
リレー小説なので仕方ないが,伏線らしい伏線はなく,ただただ意外性だけを追求した真相。リアリティはゼロだし,論理的な解決とも言えない。しかし,ミステリの本質の一つが意外性だというのであれば,意外性は十分。読む価値がないほど面白くないわけではないし,バカミスとしては楽しめるので,話のネタとして読むのは良いかもしれない。個人的には,最後を担当した芦部拓の作風があまり肌に合わないので,その点が踏まえ★2で。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2015年10月17日
読了日 : 2015年10月17日
本棚登録日 : 2015年10月17日

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