盤上の敵 (講談社文庫)

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本棚登録 : 1324
レビュー : 177
著者 :
やまだんさん  未設定  読み終わった 

〇 トータル 
 いじめをテーマにした作品は,自分自身が過去にいじめられた経験もあって,非常に心に残る。しかし,この作品は,どうにも好きになれない。いじめが胸糞悪いという点もある。こういういじめより,どこにでもありそうなささいないじめの方が感情移入ができるというか…。さらに,末永友貴子のキャラクターが好きになれない。話全体が救いがない上に,ラストもなんとも言えない。いっそ,もっと救いがないラストにした方がよかったのではなかと思える。玄人筋の評価が高い作品だが,個人的には好きではない作品。評価も絡め。

〇 事件の概要
 末永友貴子は,学生時代から自分をいじめていた兵頭三季を殺害してしまう。友貴子の夫,末永純一は,友貴子から兵頭三貴を殺害したことを知らされ,どのように死体を始末するかを考え,友貴子の身をホテルに移し職場であるテレビ局から帰宅すると…自宅が殺人犯,石割強治が自宅に立てこもり,妻と誤解している兵頭三季の死体を人質にしているという。
 末永は,石割と取引きをし,石割を逃がすことに協力し,兵頭の死体を始末すると同時に,石割を毒殺する。

〇 サプライズ ★★☆☆☆
 石割による末永家の立てこもりについての章と,友貴子による過去のつらい思い出の告白の章が入れ替わりに記述されており,分かりにくくなっているが,人質になっている友貴子だと思われていた人物が,兵頭の死体という点がサプライズ。この部分は叙述トリックというか,あえて詳細を書かないようにし,読者の誤解を促している。確かにこの真相は見抜けにくいが,特にこれといった伏線もなく,明かし方も驚かそうという雰囲気ではないので,サプライズはそれほどでもない。よくできているなと思う感じ。

〇 熱中度 ★★☆☆☆
 北村薫の作品らしく,人物もきちんと描かれており,文章もしっかりしているのだが,文体があまり肌に合わない。章ごとに視点が変わるのも,物語への没入を阻害する。あまり熱中できなかった。

〇 キャラクター ★★☆☆☆
 主人公の末永純一,その妻でヒロインの友貴子,兵頭三季,石割強治など人間はしっかり描かれており,キャラクターは立っている。とはいえ,いずれも好みのキャラクターという感じではなく,あまり魅力を感じなかった。

〇 読後感 ★☆☆☆☆
 読後感はよくない。まえがきに「読んで,傷ついた」というお便りを頂いたと書いているし,作者自ら「物がたいを読んで慰めを得たり,安らかな心を得たいという方には,このお話は不向きです」と書いているし,解説も同様の記載がある。物語の途中の兵頭三季によるいじめの描写は胸糞わるいし,最後は,純一が石割を殺害するわけだ。人間が描けているだけに,妙に印象に残ってしまい,読後感の悪さが残る。

〇 インパクト ★★★★☆
 兵頭三季の胸糞わるくなるいじめシーンや,どうにも好きになれない友貴子の内面描写,たてこもり事件をテレビ中継するというストーリーなど,インパクトは十分。忘れにくい作品である。

〇 希少価値 ☆☆☆☆☆
 直木賞作家である北村薫の代表作の一つ。北村薫ファンが好きな作風ではないだろうが,手に入りにくくはない。古本屋でもたくさんおいてある。希少価値はない。

レビュー投稿日
2016年8月6日
読了日
2016年8月6日
本棚登録日
2016年8月6日
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