神々は渇く (岩波文庫 赤 543-3)

  • 岩波書店 (1977年5月16日発売)
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感想 : 15
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再読。自分のフランス革命に関する基礎知識が「ベルばら」(+ラ・セーヌの星・笑)ベースなので、バスチーユの襲撃→国王と王妃はギロチン送り、はい終了、みたいな感じだと勝手に思い込んでいたのだけれど、実際にはその後数年にわたる革命政権による恐怖政治時代があり、名前だけはなんとなく憶えているロベスピエールやサン=ジュストなどが処刑されるまで、全部ひっくるめてフランス革命なのだなと改めて勉強になった。

日本でも明治維新前の各藩や幕府内部では、主導権を握る人間がめまぐるしく入れ替わり、その都度前任者は断罪され、まさに血で血を洗う抗争、最終的に勝ったほう次第で、かつて謀反人として処刑された人間が英雄として奉られたりもするし、その逆もしかり。フランスでもつまり似たようなことをやっていたわけですね(幕末おたくの理解度)

貴族や政治犯だけでなく、たんなるパン売りの娘や娼婦まで次々とギロチン送りにされる理不尽さ。まるで魔女狩り。どれだけ生贄を捧げても血に飢えた〝神々”は満足しない。まさに「神々は渇く」

歴史ものとして読むには、正直フランス革命に関しての知識が足りないので十分読み込めたとは言えないのだけれど、単純に物語としては、人物の造形や配置が絶妙だなと感心。愛国心が強いだけの真面目な画家だった主人公エヴァリストが、やがてその母にまで「これは人でなしだ」と思われるまでに変わってゆく姿に説得力がありすぎてこわい。(勝手な思い込み=勘違いで恋人の元カレと決めた男を処刑したのとか最低だったなー)

解説にもあったけれど作者自身を投影したと思しき無神論者でエピキュリアンなブロトは魅力的だった。彼が助けた神父さんや娼婦、元愛人など、取り巻く人物たちとの関係性や伏線も効いていて、ある意味彼が影の主役かも。

そして結局最後まで生き残るのが、政治や思想を一切語らず、ただただ女性を追い掛け回してブレることのなかった版画家デマイだけだったというのも感慨深い。エヴァリストの恋人エロディも好きだった。彼女の最後のセリフは切なかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★フランス 他
感想投稿日 : 2015年10月16日
読了日 : -
本棚登録日 : 2012年8月3日

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