幕末維新懐古談 (岩波文庫)

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レビュー : 7
著者 :
yamaitsuさん ◆幕末(小説以外)   読み終わった 

再読。高村光雲は上野の西郷さんの銅像を作った彫刻家で、詩人・高村光太郎の父。嘉永5年(1852年)生まれ、嘉永5年というと浦賀にペリーがやってくる前年。つまり少年時代は幕末の動乱期だったわけだけれど、江戸の下町で師匠に弟子入りし彫刻の修行にひたすら打ち込んでいた彼には尊皇攘夷も倒幕もどこふく風。当時の江戸の職人さんというのはこんな感じだったのかとしみじみ。

ゆえに、いわゆる幕末の志士や明治の政治家の自伝と違い、どちらかというと江戸っ子の回想録みたいな趣き。これはこれで好き。慶応元年に浅草であった火事、その前の浅草の様子など貴重な証言。その数年後には明治維新のすったもんだで上野で彰義隊の戦争、こちらも町民側からの認識はこの程度だったのかと不思議な気持ちすらする。パチパチと豆のはぜるような音がするから何かと思ったら鉄砲だったとか。

歴史の教科書以外でほぼ知る機会のない「廃仏毀釈」も、江戸時代の彫刻家=ほぼ仏師の立場から、名人の彫った素晴らしい仏像が燃やされるところを何とか救おうと奔走したり、現実的な問題として迫ってくる。小説や大河ドラマで描かれるような英雄たちの幕末維新史とはまた違った面が知れて新鮮。

大隈重信の二度目の奥さん(綾子)について、たまたまその実家が師匠のお得意先だったこともあり詳しく語られているのも興味深い。元は旗本の未亡人だった彼女のお母さんが当初は大隈を「田舎侍」程度にしか思っておらず、なんだかよくわからないうちに娘をかっさらわれた、と愚痴っていたりして、のちのち内閣総理大臣にまでなり歴史に名前を残す偉人もそんな感じだったのかとちょっと笑ってしまう。

全体的に、聞き書きということもあり非常に平易な話し言葉で読み易く、けして尊大な芸術家ではなくあくまで生真面目で謙虚な職人気質、人情家で爽やかな江戸っ子気質の光雲の人柄はとても好ましい。

似てないと評判だった(…)上野の西郷さんの銅像については語られていないけれど、銅像完成後に薩摩藩関係者の晩餐会に招かれ、そこで西郷従道や大山巌らの会話から上野の戦争当時の話題が出ていたことなどは記されている。

有名な矮鶏(チャボ)の木像について、モデルとなるチャボ探しに苦心したり、動物を彫るときは必ず実際にそれを飼ったり借りたりして詳細に観察してからでないと造らなかった拘り派であることは本書からわかるので、生きてる頃の西郷さん本人に会っていればきっとそっくりに造られたのではないかと思います。あの銅像ほぼ大山巌だもんなあ(笑)

レビュー投稿日
2018年4月9日
読了日
-
本棚登録日
2012年9月24日
2
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