ふくわらい (朝日文庫)

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本棚登録 : 1898
レビュー : 211
著者 :
yamaitsuさん  ○西加奈子   読み終わった 

主人公は、紀行作家の父親の趣味でマルキ・ド・サドのパロディのような名前をつけられた上、同じく父の影響で幼い頃から一緒に未開の地や秘境を旅したりという特殊な生い立ちを持つ鳴木戸定(サダという名はサドよりむしろ阿部定を連想させられるけど)。その生い立ちゆえ結構ワイルドな体験(人肉食やら刺青やら)を沢山しているにも関わらず、乳母がいるようなお嬢様育ちでもあり、どこか常識や感情が欠如している不思議なキャラクター。

幼いころ唯一夢中になった遊びが「ふくわらい」だったせいで、いまだに他人の顔のパーツを脳内で移動させて遊んだりしてしまう定は、おそらく対人関係において相手の内面・人格をスルーし、紙で出来た「ふくわらい」のパーツとしてしか人間をとらえていない。だからこそ淡々と心を動かされることなく仕事をこなし、それを寂しいと感じることもなく生きてきた、そんな定がプロレスラー作家の守口廃尊と出会って、少しづつ変化し始める。

定自身も変わった子ですが、編集者として働く定が担当する作家が廃尊含めことごとく奇人変人だけど面白い。引きこもり作家の「之賀さいこ」とか妙に愛着感じてしまった(笑)でもやっぱり廃尊の存在感が圧巻だったなあ。私は次郎より廃尊のほうが好きだった。イタリア人ハーフの武智次郎はイケメンなのだろうけど「先っちょだけ」とか結構うざかったので(笑)、しずくちゃんの素早いツッコミが気持ち良かったです。

この小暮しずくちゃんと、定の友情が結構個人的には泣きツボでした。友達いなかった定に初めて出来た女友達。乳母のテーに会わせたときにどっちも号泣しちゃうくだりとかとても好き。

ラストシーンだけはちょっといただけないと思ってしまったのだけれど(捕まるって!笑)、きちんとカタルシスのある素敵なお話でした。表紙絵は、定の刺青になってるんですね、読み終わってから気づいた。

レビュー投稿日
2015年9月8日
読了日
2015年9月7日
本棚登録日
2015年9月7日
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