大江健三郎は今のところせいぜい10冊かそこらしか読んでいないけれど、個人的には初期の作品のほうが好きだと思うことが多く、20代で書かれたこれもとても良いと思いました。勝手な印象だけど、大江健三郎はやはり結婚→障がいを持った息子の誕生あたりから、私小説的な方向へ転換した気がするので、それ以前の、純粋に小説っぽい作品のほうが自分の好みには合うのかも。
筋書きだけ追えば、疑似家族的な絆で結ばれた4人がバラバラになり、逮捕されたり殺されたり殺して死刑になったり結局何も達成されない悲惨な結末をそれぞれ迎える、それだけの話ではあるのだけれど、『叫び声』というタイトルと、いつの時代も、ここではないどこかへ向かいたがる若者の心理、たとえ向かう先が破滅であっても突っ走るしかない疾走感、焦燥感のようなものが胸に迫ります。
読書状況:読み終わった
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>え~お
- 感想投稿日 : 2016年2月8日
- 読了日 : 2016年2月6日
- 本棚登録日 : 2016年1月25日
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