今月公開になった映画のほうを楽しみにしていたので、原作は映画を観てから読もうと思って積んでました。原作が山上たつひこ、作画がいがらしみきおという異色の組み合わせ。いがらしみきおといえば「ぼのぼの」しか読んでいないし(流行ったなあ)、山上たつひこといえば「がきデカ」の人という認識しかしていないので、すべてが未知数。
映画はとても面白かったのだけど(3回観た)原作からは大幅に改編してあると監督が明言されてたので覚悟はしてましたが、政府の極秘プログラムにより元受刑者を受け入れた地方都市・魚深という基本設定以外はキャラクターもほとんど違ってびっくり。でもこれはこれでとても面白かった。
映画では錦戸亮が演じた市役所職員・月末(つきすえ)は、原作では仏壇店の店主で50代?の妻子あるおじさん。鳥原という市長が元受刑者の受け入れを決め、友人である月末と、大塚という食器屋?骨董品屋?の店主の二人に協力を依頼する。受け入れの理由は、映画にはなかった原作での必須事情があり、市長・鳥原の先祖がかつて流刑人たちを難破船から救って村に受け入れた経緯から魚深が選ばれたとなっている。これ重要。
タイトルとなっている「羊の木」も、この市長の鳥原が飾っている絵で、「コロンブスの時代にヨーロッパの人々は綿を『羊のなる木』と思っていたとか。まったくうらやましくなるぐらい単純な発想だよ」と説明されていて、映画の解釈とは全く違う印象を受けた。
元受刑者は映画では全員殺人犯で6名だったが、原作では殺人だけでなく詐欺、誘拐、強姦など様々で11人。映画と原作でほぼ罪状が同じだったのはDV彼氏を殺した清美だけかな。松田龍平が演じた宮腰は、原作ではどちらかというと北村一輝が演じた杉山に近い。代わりに寺田という若い受刑者が市長の娘の智子と恋に落ちる。映画のヒロインは月末の幼馴染の文(木村文乃)だったが、原作では智子が彼女のポジション。
巻末の作者対談で、山上たつひこが、犯罪者に対する本能的な皮膚感覚、生理感覚について述懐していた部分が映画でも描かれていて興味深かった。いわく、
4人殺した永山則夫がまだ生きていて仮釈放になったら、枕を並べて眠れるし、酒ぐらいつきあえる。 でも女を殺して細切れにして下水に流しちゃった奴とは絶対枕を並べて眠れない。 ヤクザの抗争で日本刀で三人ぶった切ったやつとは同じ部屋にいられるけど、借金を断わられた腹いせに相手を絞殺した人間には近づきたくない。
・・・なるほどわかる、と思います。映画を観てやはりこれは感じました。
- 感想投稿日 : 2018年2月26日
- 読了日 : 2018年2月25日
- 本棚登録日 : 2018年2月26日
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