パプリカ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年10月30日発売)
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感想 : 409
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アニメ化された映画のほうは2007年に映画館で観ました(http://booklog.jp/users/yamaitsu/archives/1/B000O58V8O)いつか原作も読もうと思いつつはや10年、ようやく着手。

精神医学研究所で働く超絶美人な上に優秀なサイコセラピスト千葉敦子は、夢探偵「パプリカ」としての裏の顔を持つ。ノーベル賞候補にもなるほどのサイコセラピー機器を開発した天才・時田(見た目はオタク)と組んで数々の功績をあげるが、それを良く思わない副理事長一派との研究所内の派閥争いに巻き込まれ、盗まれた開発途中の「DCミニ」を巡って、現実と夢を行き来しながらの激しい戦いが始まる・・・。

映画では詳しく説明されなかったので勝手に「ドリーム・センサー」あたりの略語かと思っていた「DCミニ」が「ダイダロス・コレクター」の略だったのは意外でした。あともう細かい部分は忘れてしまってるけど、映画はアニメだけに性的な要素や同性愛要素はおそらくかなり排除されていたのだなと。原作のパプリカちゃんは理事長や警視監など3人の知的で地位もあるおじさまを転がし、敵の一派の美青年・小山内にも密かに想いを寄せられ、しかし本人はオタクでデブの時田が大好き、夢の中とはいえわりとサービスよく誰とでも寝てしまうし、そのことにこだわりがない。夢の世界が舞台の話だけに彼女は登場するすべての男性キャラにとってのアニマのようだ。

とにかく男性登場人物はおじさま又はオタクなのこともあり、唯一の美青年・小山内くんが私はお気に入りでした。ナルシストでキザでインテリで、美形なことがもはやギャグのようになっている上に、副理事長と男同士でデキていて、なおかつ利益のためには女性のみならずオタク男もたぶらかし、なおかつあわよくばパプリカちゃんのこともこましたろうと思ってる両刀使い。もし実写化することがあったらぜひ及川ミッチーにやってほしい(笑)

現実と混淆し、現実世界に流出してくる夢の世界、現実と夢を行き来して戦う美女、と、エンタメSFとしては文句なしの面白さ。ただ終盤、おじさまたちのいきつけのバーの、ただのバーテンダーとウエイターだと思っていた陣内と玖珂というキャラクターがやや唐突に戦闘に協力して活躍しはじめたので、てっきり作者の別作品の登場人物とかそういうのかと思っていたら、どうやらそうではなかったらしい。映画ではこの二人のキャラクターの声優を監督の今敏と原作者の筒井康隆本人がつとめていたことも含めて、どうもすべてはこの二人の見ていた夢だった、的な読みも可能になっているかのような。確かにパプリカはおじさま及び非イケメン男性に大変優しく、夢を見ている当人が彼らならこの条件に当てはまっているなとも思うけれど。まあそういうの抜きにしても単純に楽しい読み物でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  >た行
感想投稿日 : 2017年12月18日
読了日 : 2017年12月16日
本棚登録日 : 2017年12月14日

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