薬屋のタバサ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2017年7月28日発売)
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本棚登録 : 295
感想 : 33
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タバサと聞いて即座に「奥様は魔女」と気づく年代であるがゆえに、タバサ=女の子、と思い込みで読み始めてしまって失敗。おっさんか。作者にその意図があったかどうかはわからないけど(数ページ性別は明かされない)(でも全裸シーン序盤であるのに性別わかる描写をしないのはやはり意図的なのか)脳内修正にとても苦労しました。

客観的に見てタバサというキャラクターはそれなりに魅力的なはずだし(薬局だから白衣、誰にでも敬語、無機質で生臭さがない、常に温厚で声を荒げたりしない、家族を失い天涯孤独、わけありっぽい)、なにやらワケアリでやはりけして若くもないらしい主人公女性がそんなタバサに拾われ、薬局で働くうちに彼に惹かれていく・・・というベタな展開も想定内ながら自然な流れのはずなのに、なぜかしら、全然タバサを好きになれない。主人公にも共感できない。感情をあらわにしないタバサが突然バスルームに主人公を引っ張り込むところも違和感しかなかったし、大変露骨で恐縮ですが、後半二人がセックスする場面もとても不愉快で、気持ち悪い、という感情のほうが自分の中で勝ってしまった。無味無臭の無機質な世界にいたのに、急に生臭い他人の体臭を嗅がされたような気分とでもいうか。

主人公が迷い込んだ、タバサの住む町はおそらく生者と死者の境界のような場所で、死んでからあの世へ行くまでの溜まり場のような場所なのか、あるいは死者が生まれ変わりを待つ場所なのか、それでいてそこに居つく人も出産する人もいるからよくわからないけど、まあそういう世界観自体はとても好きなのだけど。

東直子の作品は最初の「水銀灯が消えるまで」と「とりつくしま」までは好きだったけど、どうもそれ以降は主人公の幼稚さに苛立って好きになれないことが多く、今回も、実は子供を二人捨ててきた母親である主人公が、中途半端な好奇心を発揮したり、少女じみた言動をすることに常に潜在的にイライラしながら読んでいたのだと思う。自己憐憫の強いタイプには気持ちが寄り添えない。結果、世界観や設定は好きだけどキャラクターを好きになれない小説は、作品としても好きになれない、とわかりました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  >は行
感想投稿日 : 2017年8月7日
読了日 : 2017年8月4日
本棚登録日 : 2017年8月3日

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