新装版 竜馬がゆく (8) (文春文庫)

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本棚登録 : 4663
レビュー : 287
著者 :
yamaitsuさん  ○司馬遼太郎   読み終わった 

再読。武力倒幕一本の薩長に対し、複雑な立場の土佐藩側から竜馬の発案した「大政奉還」を実現するべく奔走する土佐の面々。薩摩、長州そして岩倉具視を説得した中岡慎太郎はさらに陸援隊を結成して浪士救済と同時に兵力増強を図る。

しかし長崎で英国船イカルス号の水兵殺害事件が起こり海援隊に容疑が掛かる事件が勃発、英国公使と幕府の船が土佐へ乗り込んでくる前に、竜馬も急ぎ土佐へ。このあたり、少し前に再読したアーネスト・サトウの日記にも詳しかったけれど、実は海援隊は全くの冤罪でとんだとばっちり。大政奉還の大仕事前に足を引っ張られた竜馬は大変気の毒。竜馬不在のあいだは後藤象二郎のターン。近藤勇とのエピソードなども。

それにしても司馬さんが上手いなあ、と思うのは、この終盤になってようやく、しかしラストシーンではなく何てことない場面(越前福井藩に三岡八郎=のちの由利公正に会いに出かけるくだり)で、さらりとタイトル「竜馬がゆく」を織り込んでくるところ。激情家のイメージの強い志士たちの中で、坂本竜馬という肩の力の抜けた風変りな人物でありながら、大仕事を成し遂げた男の凄味みたいなものを同時に表現していて素晴らしい。

改めて読み直すと、思っていた以上に娯楽小説で、史実より物語としての面白さ重視であることに気づかされた。あまりにも面白くて(あまりにも竜馬が魅力的すぎて)これが本当の歴史だと誤解してしまうほどに。しかしいわゆる司馬史観というのはそういう創作部分を指すのではなく、たとえば幕末と比較して昭和の戦争の愚かさに憤ったりする、そういう余談の部分だと個人的には思っているので、要は読むほうの読解力の問題。面白い歴史小説を読んで歴史に興味を持つ、小説の役割はそれでいいと思う。

レビュー投稿日
2019年6月12日
読了日
-
本棚登録日
2012年9月21日
2
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