ヘリオガバルス: あるいは戴冠せるアナーキスト (河出文庫 ア 5-2)

  • 河出書房新社 (2016年8月8日発売)
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感想 : 7
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白水社から出ていた多田智満子訳のをずっと前から読みたかったのだけど、すでに絶版で入手が難しく忘れかけていたころに、河出文庫から新訳が!アルトーはおそらく元の文章そのものがややこしいので、翻訳の良し悪しは正直よくわからなかったけど(たまに日本語としておかしい気がする箇所があったけど翻訳のせいかどうかわからないし)それなりに読み易かった気はします。

3章だてになってるんですが、正直2章はちょっと飛ばそうかと思った(苦笑)短いので一応読みましたが、ヘリオガバルスとは直接関係ない作者の自説が延々と述べれているだけなので、難解。もちろん読んだほうが全体の理解は深まるとは思いますが。もしここで躓く人がいたら、思い切って飛ばして3章だけ読めば十分。本題ともいうべき3章は圧倒的に面白い。

以前『神の裁きと訣別するため』を読んだときにも思ったのだけど、アルトーは作家である前に演劇人であるということを念頭に置いて読むと、全体像を立体的に理解しやすい気がする。ヘリオガバルスという最高権力者にしてアナーキーという矛盾をかかえた人物のことも、その奇矯な行動が舞台上のことであると思えば理解できるような。なんというか、彼にとって臣下も国民も、観客だったのではないかと。彼のやることにいちいち反応(怒りでも喝采でも軽蔑でも)を返す観客がいるからこそ、彼の狂気はエスカレートしていったような印象を受けました。

訳者のあとがきにもギリシャ悲劇のようだとありましたが納得。女性の支配力が強いのもバッカスの巫女みたいで怖い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★フランス 他
感想投稿日 : 2016年8月9日
読了日 : 2016年8月8日
本棚登録日 : 2016年8月8日

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