君は永遠にそいつらより若い (ちくま文庫)

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本棚登録 : 992
レビュー : 134
著者 :
yamaitsuさん  >た行   読み終わった 

公務員としての就職も決まっている大学生のホリガイは22才処女。恋愛に興味がないわけではないけれど、自分が男女どちらを好きなのかもよくわかっていないようなところがある。親友のオカノ、できる男らしいが人間性に問題のありそうな河北、その恋人のアスミちゃん、河北に彼女を奪われそうになった吉崎くん、吉崎くんの友達で死んでしまった穂峰くん、バイト先の主任の八木くん、バイトの後輩のヤスオカくん、そして大学の学食で出逢ったイノギさん、ホリガイと彼ら彼女らとの関わりを淡々と描いているようで、随所にピリピリする刺激(痛み)が散りばめられていて、なんというか、登場人物たちが若いせいもあるけれど「これぞデビュー作」というパンチが効いてました。

ホリガイは、公務員になるために地道な努力を重ねる生真面目さがありつつ、ふだんの生活態度はひょうひょうとしていて汚部屋でも平気、女子力低めで恋愛経験もないが、なんかこう、イイヤツだ。そういう女性を意識させない彼女に何でも愚痴を聞いてもらうはけぐちのようにしている河北という男が、彼女をクズよばわりする場面では「お前のほうがクズだろうが!」と憤った。この自己陶酔勘違い男の河北が本当に嫌いで虫唾が走る。語るべき何も持たないのも、他人に嫉妬しているのも、ホリガイではなく河北のほうだ。ホリガイは謙虚だから自分の言い方も悪かったとか反省しちゃったりするけど、ああいう男とはできるだけ距離を置いたほうがいい。

バイト主任の八木くんの「けつ」に執着するホリガイが愉快な替え歌を創作するあたりは爆笑したし、随所にくすっとできるユーモアがあるのは津村記久子ならではだけれど、小学生のときに男子二人がかりでボコボコにされた経験のあるホリガイ、終盤で明かされるイノギさんの壮絶な過去、穂峰くんが助けたネグレクトされている子供、アスミちゃんのリスカ癖を利用する河北など、強者から弱者へのかなりヘヴィな暴力が実はその裏にあり、このユーモアセンスがなければ読み切るのがとても辛い小説だったんじゃないかと思う。それだけに、冒頭から繋がるラスト、ホリガイがイノギさんのもとへ行こうとする場面は胸に迫るものがあった。

もとの(投稿時の)タイトルは『マンイーター』だったそうですが(これもまた意味深)「君は永遠にそいつらより若い」という終盤でホリガイがある少年に(心の中で)贈る言葉をタイトルにしたのもかっこいい。解説は松浦理英子。

レビュー投稿日
2019年4月12日
読了日
2019年4月11日
本棚登録日
2019年4月12日
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