ホビット〈上〉―ゆきてかえりし物語

  • 原書房 (2012年11月1日発売)
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本棚登録 : 403
感想 : 29
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岩波少年文庫版の『ホビットの冒険』は、『指輪~』にはまったときに当然読んでいるんですが、これは新訳で詳細な注釈つきのが文庫になったので、来月の映画公開にあわせてちょっと復習がてら読んでおこうかなと。ただ注釈つき、嬉しいんですが、1冊につき4分の1(実に100ページ以上)くらいが全部細かい文字ぎっしりの注釈なので、本文と照らし合わせて読んでると、なかなか先へ進めません(苦笑)。注釈自体は、トリビア的なものが多くて、それはそれで面白かったんですが。

瀬田訳が出た頃より、トールキンに関する研究もずっと進んでいるわけだし、訳者もより正確に、というのを心がけてくれたようですが、個人的には、たとえ意訳すぎだと言われても、瀬田訳独特の言い回しには愛着があり、とくにゴラムの指輪に対する呼びかけ「いとしいしと」が今回「愛し子チャン」という中途半端な訳になっていたのはちょっと違和感ありました(もとの英語は「my precious」)。たとえば指輪のほうでも「Strider」を「馳夫さん」って呼んじゃう瀬田訳の独特のセンス、今となっては愛おしいですもの(笑)。

人名も、トーリンがトリンになったりと、ドワーフたちのほとんどから名前の中の「-」が消えてましたけども、こういうのは発音の正確さ優先なら仕方ないのかなあ。さすがに「ビヨルン」が「ビヨン」になったのは、なんかちょっと変…って思っちゃったけど(苦笑)。でも全体的にはすごく配慮のゆきとどいた印象の訳文なので、訳者さんへの好感度は高かったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ○トールキン
感想投稿日 : 2012年11月26日
読了日 : 2012年11月25日
本棚登録日 : 2012年11月12日

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コメント 4件

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2012/12/13

「瀬田訳独特の言い回しには愛着があり」
私もです、、、
山本史郎が、「ファンタジー画集 トールキンの世界」の後書きで”裂け谷”の訳語について熱く語っていたのが印象に残っているので、この翻訳は読むのが愉しみなんです!

yamaitsuさんのコメント
2012/12/14

瀬田訳には独特の親しみやすさや温かみがありますよね!垢抜けないんだけど、そこがまた物語世界と合ってるというか。
山本訳も、なんというか作品と向き合う「誠実さ」「真摯さ」が感じられてなかなか好感度高かったです。
トールキン作品の場合、単純な翻訳だけでなく、世界観や背景に対しての理解もないと難しそうですし、そこをすっとばすと、戸田奈津子の映画版字幕みたいに、ファンから非難轟々になっちゃうんですよね(苦笑)

猫丸(nyancomaru)さんのコメント
2013/01/07

「戸田奈津子の映画版字幕みたいに」
そう言えば、そんなコトがありましたねぇ~。
「ホビット」観てきましたが、しっかりエンターテイメントしてました。なかなか良かったですヨ!

yamaitsuさんのコメント
2013/01/08

「ホビット」良かったですか!まだ見れてないんですが、俄然楽しみになってきました!

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