そして父になる DVDスタンダード・エディション

監督 : 是枝裕和 
出演 : 福山雅治  尾野真千子  真木よう子  リリー・フランキー 
  • アミューズソフトエンタテインメント
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本棚登録 : 1681
感想 : 308
4

2013年 日本
監督:是枝裕和
出演:福山雅治/尾野真千子/真木よう子/リリー・フランキー
http://soshitechichininaru.gaga.ne.jp/

赤ちゃんの取り違えもの、というと昭和のドラマや映画では結構定番ネタだったと思うのですが、まさかこの時代に、と作中でも当事者たちがもらすように、平成になってからはあまり見かけなくなった題材かも。しかし孕んでいる問題はいつの時代でも普遍的。「産みの親」か「育ての親」か、はたまた「血」か「情」か。経済状態の格差、教育方針の違い、子供にとってはどちらで育つことが最終的に幸福なのか。

一方の家庭は、一流大学を出て一流企業に勤める有能でカッコいいエリートの父親(福山雅治)と専業主婦の母親(尾野真千子)、当然子供には習い事をさせ、小学校からお受験。もう一方の家庭は古びた電気屋を営む父親(リリー・フランキー)と、子だくさんのためパートで働く母親(真木よう子)、けして裕福ではないけれど子供はヤンチャでのびのび育つ。

このへんの設定はある意味ステレオタイプで、勝ち組エリートの主人公はあからさまに相手を見下しているし、発言も高慢。しかしだんだん実はそんな彼にも、自身の父の離婚後、血のつながらない後妻に育てられた過去があり、父とも不仲、妻のほうはもともと庶民派で、結婚したもののエリートの夫に対して引け目を感じているらしきこと、それぞれに抱えていた問題が浮き彫りになってきます。

女性としては(生んでませんが)やはり母親たちのほうに感情移入してしまい、夫はそっちのけで連帯しあう母親同士のほうに共感しました。いちばん泣けたのは、子供を交換することを決めたあと河原で二人が抱き合う場面。自分でお腹を痛めてない男には絶対わからない感覚でしょう。

福山雅治はシンガーとしても役者としても特別好きも嫌いもない存在でしたが、この映画の彼はとても良かったです。仕事人間で高慢な彼が、だんだん人間味を取り戻してゆく過程がとても自然でした。とりあえず今日本でいちばんカッコイイ45歳なのは間違いない(笑)。兄役で登場した高橋和也は同じ69年生まれだったはずですが、見た目すごいギャップが・・・(いや彼は彼で良い役者ですけどね!アイドル時代から演技派でしたし、橋口監督の『ハッシュ!』は素晴らしかった)。安定の樹木希林、どんな映画にもちょい役で出てきちゃう井浦新など、他の脇役も豪華でした。

映画の中での彼らは、ひとまずある結論を出しますが、この先子供たちが成長するにつれまた問題は起こってくるだろうし、結局どうすることが正解なのかは誰にもわからない。選択を後悔することもあるかもしれない。けれど、たとえ平凡な家族でも実際にはただ血の繋がりだけに甘えていてはきちんとした関係は築けないし、そもそも夫婦は他人同士が家族になるわけで、結局遺伝子よりも、記憶や時間のほうが人間に与える影響は大きいのだと個人的には思います。良い映画でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  邦画
感想投稿日 : 2014年6月25日
読了日 : 2014年6月24日
本棚登録日 : 2014年6月25日

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