裸足の季節 [DVD]

監督 : デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン 
出演 : ギュネシ・シェンソイ  ドア・ドゥウシル  トゥーバ・スングルオウル  エリット・イシジャン 
  • ポニーキャニオン
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感想 : 11
5

MUSTANG
2015年 フランス+トルコ+ドイツ 94分
監督:デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演:ギュネシ・シェンソイ/ドア・ドゥウシル/エリット・イシジャン/トゥーバ・スングルオウル/イライダ・アクドアン
http://www.bitters.co.jp/hadashi/

端的に言うとトルコ版「ヴァージン・スーサイズ」。厳しい保護者により自宅に監禁された美しい5人姉妹の物語。「ヴァージン・スーサイズ」同様、5人姉妹はそれぞれに違う美しさがあり、姉妹でキャッキャとくっついて戯れてるさまはそれだけで目の保養。映像的にはソフィア・コッポラにも劣らないガーリーな色彩で、ベッドやシーツの色もピンクを多用してありとても可愛い。ハエ叩きですらピンクでお花型(これ欲しい)。

とはいえ、彼女たちの辿る運命はキュートなガールズムービーのそれではない。トルコの片田舎、ムスリムの古い因習が残る中、5人姉妹は10年前に両親を亡くして祖母に育てられているけれど、横暴な叔父が彼女らに干渉してくる。無邪気な姉妹が男の子たちと海で騎馬戦をして遊んでいただけで、目撃した近所のおばさんは「男の首を股ではさんで快楽を得た」みたいな告げ口をする。おいおい、その発想のほうがよっぽどゲスだよ!とこちらは思うのだけど、トルコではそうではない。姉妹は早速病院へ連れていかれ、処女であるかどうか検査される。処女でなければキズモノとされ嫁に行けなくなるから。

あげく横暴な叔父は家の窓に鉄格子をつけ、柵をはりめぐらし、姉妹を学校にも行かせず家の中に軟禁する。それでも脱走をかさね、姉妹揃ってサッカー観戦にでかけたり、5人揃っているうちは彼女たちはめげない。最初は厳格に見えた祖母も、横暴な叔父に比べたら少女たちに優しいし、近所のおばさんが、姉妹のサッカー観戦が叔父にバレないようにある行動をするところはとても微笑ましかった。しかし脱走がばれてどんどん監禁度合は厳しくなり、さらに姉妹は上から順番に結婚させられていく。

恋愛結婚できた長女はまだ良かったけれど、次女以下、あちらの「お見合い結婚」のやり方にはビックリ。日本だと両家揃って顔合わせしてもその後は「若い二人で」となり、数回会ってから決めるなり断るなり判断する自由があるけれど、あちらでは顔合わせ、即その場で婚約。もちろん形式的なもので断る余地はない。さらに次女は「初夜」で血が出なかったため(なんとコトのあと夫の両親が夫婦の寝室に血痕を確認しにくるしきたり)処女性を疑われまたしても病院へ。この侮辱、屈辱。

そして一番腹立たしかったのが、そうまでして処女性を重視し、結婚前に「ふしだら」なことをしないようにと姉妹を厳しく監視しているにも関わらず、当事者である叔父が、長女次女が嫁入りしたあと、三女におそらくは「性的虐待」を加えていたこと。このオッサンにはマジで殺意を覚えました(怒)長女と次女が同時に結婚式を挙げる前、恋愛結婚である長女が自分はまだ処女だと次女に打ち明けるくだりで、なぜかというと結婚前は「後ろの穴」を使っていたからだと言う、この一見姉妹の他愛ない秘密の会話が、実はつまり叔父の手口をほのめかしていたのかと思うとゾッとする。そしておそらくは叔父から受けたその行為で心を病んだ三女は自殺。

四女にまで叔父の手がのび、気付いていても祖母は守ってくれず、四女の結婚話がもちあがるに及んで、ついに末っ娘ラーレ13歳は大掛かりな反逆を企てる。それにしても姉妹への監禁っぷりはもはや異常。彼らの基準では「しつけ」なのだろうけど、先進国の感覚では明らかにここまでやったら「虐待」。しかも叔父はロリコンのクズ野郎。強い意志をもって戦い、逃走のために車の運転も前もってマスターしておくラーレが逞しく頼もしい。彼女を助けるトラック運転手のあんちゃんが良い人で良かった。

二人はなんとかイスタンブールの先生のところまで逃げ切るけれど、その先の彼女たちの人生がどうなるかはわからない。悲惨なことも起こるけれど、基本的にはイキイキと眩しい姉妹たちの魅力が素晴らしく、前向きで明るい映画だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  インド・中東映画 他
感想投稿日 : 2016年12月28日
読了日 : 2016年12月27日
本棚登録日 : 2016年12月28日

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