帯に「現代における未曾有の孤独を描く連作短編集」とある。
この歳になって再就職し、採用担当者の方に「あなたの人生の目標達成率はどのくらいですか」と聴かれ、おおかた70%くらいと答えた。あらためて自分のことを自分で確かめる機会だった。夢や希望がまったくないわけじゃないけど、だいたいの人としての「行い」はひととおり経験済み(というか、満足してる?)に思う。そんな自分は若いころと思うと欲望のようなものが減っているように思える。なぜかすっきり誇らしく感じる。これが歳を重ねるということなのかもしれない。
この本の主人公の笑子さんは誰も住むことがなくなった故郷(久住高原!)の実家を売るために愛犬のフジ子と一緒に何ヶ月かかけて整理している。その合間に近所の高原や山を散歩したり仲良くしている女友達と交流したりしている。笑子さんは60歳代?、人生の終盤にさしかかっている。ひとり、実家の古びたものの片付けをし寝酒を少したしなむ。その傍らにはフジ子。見る夢は夢と現実、過去の出来事が重なる。
歳を重ねた自分が笑子さんの自然を相手にした山の生活を少し羨んでいる。
なんだか現実と夢の間の浮遊感みたいなものが伝わってきてなかなか趣を感じた★★★★★。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
村田喜代子
- 感想投稿日 : 2011年3月27日
- 読了日 : 2011年3月27日
- 本棚登録日 : 2011年3月27日
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