「おおきく振りかぶって」のひぐちアサの、デビュー作を含む単行本。
表題作「家族のそれから」では、家族の中心であった母・ハツコが急逝してしまい遺された兄妹と、若い義父とのギクシャクした生活の、彼らが同じ方向へ一歩を踏み出せるようになるまでを描いています。
ひぐちアサの心理描写といえばとにかく言葉の省略が多く、安易にキャラクターの心に踏み込ませてはくれません。
口の開き具合、眉の角度といった表情や台詞回しから、まるで現実の人間に向き合うようにするしかないのです。
ときに漫画としては不親切ではとすら感じるほど。ただ、それがとてつもないリアルを生み出していることは確かでしょう。
母親の恋人である義父へジレンマを抱く兄、母の代わりになろうと努める妹、掛け橋を亡くしてしまいどこか"家族"になれないままの義父、お互いを一番に考えている兄妹、ハツコが愛した兄妹を愛する義父。
それぞれの矢印が複雑に配置されているのですが、どの二人を抽出しても完全には向かい合えていないような微妙に不器用な三人です。それが三人という人数なのかもしれません。
その中にあって、義父の電話を偶然にも兄妹が聞いてしまうシーンと、そのあとの、食事の回想シーンは、兄が後に義父へ少しずつ歩み寄る大きな要因となっています。とくに後者はうっかりすると泣いてしまいます。
10年後、彼らが幸せな家族になれていたらと願います。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年5月10日
- 読了日 : 2013年5月10日
- 本棚登録日 : 2013年5月10日
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