2012年6月23日から8月19日まで、三菱一号館美術館で開催される「バーン=ジョーンズ 装飾と象徴」展に合わせて出版。共著者加藤さんは同館学芸員。同展を見る方には願ってもないテキストです。
「もっと知りたい」シリーズは初めて買いました。「芸術新潮」や、美術特集の時の「BRUTUS」のような雑誌っぽいレイアウトで、本文テキストがコンパクトにまとまっているので、初心者にも非常にとっつきやすいです。作品の図版はもちろん、当時の時代背景や人脈の紹介など、トリビア的なコラムも豊富で飽きずに楽しく読むことができました。印刷もとても良いと思います。
バーン=ジョーンズはウィリアム・モリスとの親交が深いことでも知られます。産業革命により近代化しつつある英国で、大衆が美的感覚を失いつつあることを危惧した二人は意気投合。家具やステンドグラス、タペストリーといった美術工芸の分野でも優れた作品を残しました。
当時やはり絵画彫刻などの純粋芸術よりも、工芸はランクが下に見られていたそうです。バーン=ジョーンズは両者に優劣をつけず、工芸デザイナーと画家の両方を同じ比重でこなしました。
若い頃からアーサー王伝説やギリシャ神話に強い傾倒を示し、イタリアでヴェネチア派ルネッサンスに触れたことで、独自の作風を確立。見ればすぐに分かりますがとにかく色彩が美しく、デッサン力はすさまじいまでに完璧。装飾的な構図や、あえて動きを感じさせない中世的な人物のポーズが、吸い込まれるような静謐さを放っています。
素直に美しいなあとうっとりしてしまう素晴らしい絵ばかりです。題材である神話のストーリーが簡単に説明してあり、鑑賞の助けになります。この本をあらかじめ読んでおけば、展覧会に行ったときにいちいち説明板を読んで時間をとられることもなさそうです。
アカデミーやサロンの主流だった新古典主義と、それに対抗する印象派がアート界をにぎわせていた19世紀後半。そんな中バーン=ジョーンズが、ギュスターブ・モロー、フェルナン・クノップフといった象徴主義の画家たちと共鳴しあっていたという話は非常に興味深かったです。
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- 感想投稿日 : 2012年7月5日
- 読了日 : 2012年7月5日
- 本棚登録日 : 2012年7月4日
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