雪と珊瑚と

著者 :
  • 角川書店(角川グループパブリッシング) (2012年4月28日発売)
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「赤ちゃん、お預かりします」

そんな貼り紙を見て、藁にもすがる思いでくららを訪ねるシングルマザーの珊瑚。娘の雪を育てるため、生きるために働かなければならない。

パン屋で働く中、アレルギーを持つ男の子、その母親と出会う。アレルギーを持つこどもにしてあげられることはないか、ナーバスになることもやむを得ない母親の力になれることはないか。
くららと過ごし、一緒に食事を取る中、他者から何かあたたかいものを手渡してもらうということが、生きる力に繋がるということに気づき、珊瑚はカフェを開きたいと思うようになる。


カフェを開くまでの過程がきちんと書かれてあるのがとてもよかったです。
また、シングルマザーであることの気負い、同情されたくないという気持ち、嫉妬心などを素直に認めて克服しようとする珊瑚が清々しいなと思いました。
前向きで料理上手のくららがとても魅力的です。相手の全てを認め、受け入れるという姿勢、彼女の信仰に関わるものもあるかもしれないけれど、すごいなぁと思いました。くららの作るごはんが食べたい!
時生さんも場を和ませてくれる素敵なキャラでした!

母親に愛されないということを受け入れた珊瑚の気持ちは想像を絶します。それでも雪の母親として、一人の人間として前を向いて生きる珊瑚の強さ、母親の強さを感じました。

最後の雪の「おいちいねえ、ああ、ちゃーちぇねぇ」はほんとに泣けました。
「食べる」こと。「生きる」こと。
ごはんを食べると元気になる。
それは一杯のスープでもたとえさ湯だってかまわない。「食べる」という行為は明日も頑張ろう、生きようと思わせる、心の「復興」に繋がる。
単純だけれど、その本質に気付かされる、考え直すきっかけになる一冊です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年7月27日
読了日 : 2015年7月20日
本棚登録日 : 2014年10月1日

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