ノーノー・ボーイ

  • 旬報社 (2016年12月14日発売)
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感想 : 17
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戦前に移民した親を持つ日系アメリカ人、2世の戦前・戦中・戦後について、ほぼ実話を元に書かれたと思われる文学作品。主人公は、アメリカ人としての徴兵を拒否して服役し、その後出所。両親は出稼ぎとしてアメリカに渡ったため、日本人であるというアイデンティティを捨てないまま、母親に至っては終戦後も日本が勝ったと思い込み「敗戦」を受け入れられないまま、日本の家族からの仕送り嘆願の手紙も信じられぬほど精神を病んで自殺してしまう。せっかく生きながらえたにもかかわらず、戦争は家族を分断させ崩壊させる。そしてどんな時代にもかかわらず、若者は若者なりに悩みや葛藤を抱えて成長してゆく。当時のリアルな現実が等身大に綴られているように感じた。

戦前北米移民となった曽祖父の弟について、ちらほら噂程度の話は耳にしたことがあるが、このような実体験を聴く機会はなかった。祖たちの経験について知るための貴重な一冊。翻訳されたものを読むことができて良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学
感想投稿日 : 2020年8月16日
読了日 : 2020年8月16日
本棚登録日 : 2020年8月5日

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