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死の島 (文春文庫)
- 小池真理子
- 文藝春秋 / 2021年3月9日発売
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滅びの美学。
死生観をこれでもかこれでもか、と問いかけられている気がするので、正直、この作品が合わない方もいるかも知れない。言うて、どんより重い雰囲気が延々続くので。
だけど、私は割と好きな作品。
強烈なメメント・モリ作品だと思う。
死に至る老人登志夫のわずかな生の匂いが尿の匂い、というのがリアル。
それをきっかけに一瞬だけ抱きすくめられる樹里。
「おれのことを小説に書け」と切望されるのだけど、男女の愛なのか、死にゆく者から生者へのバトンパスなのか、ものすごく複雑な感情が混ざり合って、二人のその一瞬の抱擁が、なぜだか永遠の重さに感じられて切ない。
でも。
たぶんこういう死に方、いいな、自分もこんな感じで人生を終えたい、という人、結構多いんじゃないかな。実は私もそうなので。できるかどうかは難しいけど。
人生のピリオドの打ち方って難しいね。遅すぎても醜いし、早すぎてももったいない。なんて、俗物な私は思いました。
2024年12月1日
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無花果の森(新潮文庫)
- 小池真理子
- 新潮社 / 2014年5月1日発売
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なんか2時間ドラマとかにふつーになりそうな感じのストーリーだった。わたしにとっては可もなく不可もなく。
と書いたところで映画化されていたという情報を発見。K-POPグループのメンバーが初主演(て書いてあるけど、主人公泉の相手役鉄治の役。でも主演って記述になってるのは鉄治が主役の設定に変更されているか、いずれにせよおそらくなんの話題にもなってないので観ようともおもわないが)。泉役の女優は知らないし、八重子役が江波杏子さんなのもちょっとイメージと違ってて、まぁ、別物になってる可能性大。
どっちかっていうと、泉と鉄治の世捨て人カッブルの人生再生ストーリーよりも、老女の画家八重子の人生のほうに興味が湧いた。この二人よりも絶対深い人生だろうなと思う。
でもそれを詳らかにするよりも、世捨て人カップルの脇に添えられてる感じのこのストーリーの流れのほうが、なんか余白というか語られていないところの奥深さがあっていいのかもしれない。
人生の本質はチラ見えするところにあるのかもしれない。だから見逃しやすいのかもね。
2024年11月20日
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傷だらけのカミーユ カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ (文春文庫)
- ピエール・ルメートル
- 文藝春秋 / 2016年10月7日発売
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普通に面白かったし、途中意外なからくりが明かされるところも良かったんだけど、やはり一作目、二作目と比較すると衝撃度が薄まってしまった感はある。
しかし、主人公のカミーユのハートがズタボロなんだけど、これってまた次回作(あるのか?)までメンタル的に持つのかなーと若干心配になるわ。自殺しちゃってもおかしくないほどの傷心度なんだよね。
あと、海外警察犯罪ミステリーは一作目、二作目もだけど、もうカタカナの名前が頭に残らなさすぎて、読了までに時間かかる(笑)時間に余裕あるときじゃないともう読めないかも。面白かったけど。
2024年10月30日
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新装版 殺戮にいたる病 (講談社文庫)
- 我孫子武丸
- 講談社 / 2017年10月13日発売
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2024年10月30日
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その女アレックス カミーユ・ヴェルーヴェン警部シリーズ (文春文庫)
- ピエール・ルメートル
- 文藝春秋 / 2014年9月2日発売
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突如として拉致監禁された女性アレックス。
いわゆる拉致監禁からの脱出劇ストーリーかと思いきや、展開が二転三転し、アレックスの本当の顔が現れ始める。
誰が被害者で誰が加害者なのか、一人の女性の姿がオセロのようにパタンパタンとひっくり返っていく。
ネタバレなんであまり多くは書きませんが、ラスト、あれはあれで大団円だよなー、真実ではないかもしれないけれど。
あと、余談だけど、吝嗇な部下のアルマンのオセロも返し方もなかなか小粋でワタシは好き。
三部作らしいんだけど、この作品から読み始めちゃったから、前作もぜひ読みたい。
2024年8月20日
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「限りなく少なく」豊かに生きる
- ドミニック・ローホー
- 講談社 / 2013年4月25日発売
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動物の一生って、例えば草食動物とか逃げコース間違って食われちゃったり、己のミスが=死で、それでジエンドなんだけど、反面、人間って死に繋がらないミスが多いじゃないですか。(死ぬミスもあるけど)
だから長い一生、その死に至らなかったミスを反芻して悔いたりする。なるべくならミスしたくないなぁ、回避したいなぁ、って思う心が指針というか、何か自分以外の物事を信じたいって思ってしまうのかもしれない。
これだ、と思って信じても、それがデマだったり、他者に受け入れられなかったり。
信じるって何なんだろうね。昭和、平成、令和、と、どの時代もリアルタイムのその時は混沌とした時代だけど、わずかな灯りを求めてみんな彷徨ってるのかな、と思った。
飛馬も不三子もそれぞれの人生を彷徨い歩き続けてきて、唯一の接点というか、同時に降り立ったプラットホームが【子ども食堂】だったのだ。だがまた、そこから二人は別の列車に乗って遠ざかっていく。
人類滅亡という危機はそうそうなかった、滅ぶならみんなで、という滅亡のデマも消え、同時にそれを持ち上げる方舟も消え去った。
年代別の事件や事柄をうまく二人の人生に絡ませて、飽きずに読了。少しほろ苦い読後感。
2024年7月8日
「方舟」を読んで、結構面白かったので続いて同じ作者のこの作品を読む。
前作に続いて旧約聖書モチーフのタイトル。だが、特に事件や登場人物は前作とはとくに繋がりは無さそうに思える。
だが、やはり閉塞された舞台、登場人物は限られた人数のみ、という前作を踏襲された事件の数々でストーリーは進んでいく。
で、今回、前作とちょっと違うのは、読んでいるこちらが早いうちに犯人の目星がついてしまったことである。(必ずしも誰でも犯人がわかるというのでもないし、なぜわかったのかはネタバレになるのでここでは割愛する)
で。
最後まで読んで、「まぁ面白かったけど、前作ほどの衝撃はなかったな」と本を閉じようとしたら、QRコードが印刷されていることに気づいた。
まさに楔を打たれたかのような衝撃を受けたのは、そのQRコードを読み取ったサイト(ある意味、本当のネタバレ)を読んだからだ。
「なるほど」と声が出た。
これは、でも第三作、第四作…と連作シリーズになるのか、それともここで終わりか。
続きを読みたいような、ここで終わりにしてほしいような、そんな複雑な気分。
QRコードのサイトまで含めた「お見事」な作品。
2024年3月30日
ラストの衝撃はネットの評判もかくや、と納得。お見事過ぎる…。
方舟、というモチーフなのもすごく良い。
旧約聖書の方舟は大洪水の広い大海を彷徨うのだが、この小説の方舟はそれ自体が閉じた地中深くにあり、静かに水が満たされていく、というのが対照的。方舟に相対する海や水、といった人を脅かすものが外的環境にあるのか、内包する地中に存在するの違いが面白い。
人が生きる、と言う事には他者の犠牲が伴う原罪がどうしても纏わりつくのだけど、生き残る者と犠牲になって死ぬ者の選別が、ノアの方舟を彷彿とさせる。
ただし、聖書のノアは明らかに選定者だったが、この小説での命の選定者は終盤まで正体不明だ。
そして、その生存者であり選定者は、明らかに正しく「生き残る」ということだけに注視し、至極冷静に淡々とそれに向けて行動を続けていた。
彼(女)(便宜上ネタバレ避けたいので男性か女性かぼかします)の生存戦略は責められるべきなのか、否や。エゴか否か。
ラストまで読むと、「責められない」という方が多いのではないかと思う。いや、「責められない」べきである、という小さな鍵のような仕掛けが実は施されていたのだが…。
その仕掛けも含め、ラストはやはり衝撃を受けた。
だけど、「お見事」と言いたくなる、過不足なく収束させた物語を見れた称賛的な気持ちと、生き残る事への原罪をまざまざと見せつけられた、どんよりした気持ちがないまぜになった、言いようのない衝撃。
極上のイヤミスを読みたい方にオススメ。
2024年2月6日
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71歳、年金月5万円、あるもので工夫する楽しい節約生活
- 紫苑
- 大和書房 / 2022年7月23日発売
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美しい老後のシンプル節約ライフ。
ものすごくセンスの良い暮らしぶりなんだけど、もともとこの方は若い頃は着道楽で、老後までにいろいろ良い品も悪い品も見てきたからなのかな、と思いました。
自分が老後の時にこんな美しいシンプルライフが出来たらな…と思います。
お金を使わず、知恵とセンスとアイディアで賢くオシャレな暮らしぶりを憧れる方にオススメ。
2023年9月12日
持ち物を軽く、情報を軽く、スケジュールを軽く、タスクを軽く、思考と習慣を軽く…。
自分の身の回りや仕事、頭の中を常に整理し軽く保つ事でフットワークが軽くなる、心や気持ちが軽くなる、と言う事らしい。
なるほどな~と思いました。
あと、マルチタスクは非推奨。集中して。
いろんなしがらみで脳疲労が起きるのを防いで心も仕事負担も軽くして人生を充実させようというネアカな本でした。
これだけ徹底出来ればいいなぁとは思いました。
2023年9月12日
桐野さんの長編慣れしてる方はちょっと物足りない読後感かもしれませんが、自分は割と楽しんで読めました。
いつもの長編作品とは違う、ちょっとしたリアリティ(必ずしもきれいななオチがあるわけではないところ)と少しの毒、小市民的な生活の中のエゴとエゴの軽くぶつかるザラリとした感じ、など。
これ1冊だけだと確かに味気なく思うかもですが、長編作品の合間に箸休め的に読むならアリかと思う。
2023年8月17日
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アラカン・サバイバルBOOK ババアはつらいよ
- 槇村さとる
- 集英社 / 2018年8月24日発売
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2018年刊行のものなので、その更に前に執筆をされていたという事を踏まえると、その後の数年で世界情勢や価値観がまた変化していて、この本のすべてが参考になるわけではないけど…。
まあ、内なる自分に正直に、笑って無理せず過ごそうね、という部分には納得。
ファッションに関しては執筆された5~6年前とはまた価値観的な物が多様化しつつあるので、なんとも言えない。
年に関わらず、自分の着たいモノ、着心地の良いモノ着ればいいんじゃないかな、としか。
こういうファッションも含めた師範エッセイ本って、読む方も賞味期限的な物があるなあ、と感じた。仕方のない事だけど。
ファッションも生き方も時代に応じてアップデートが必要なんだな、と感じた。
2023年8月11日
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サロメ (文春文庫)
- 原田マハ
- 文藝春秋 / 2020年5月8日発売
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原田マハさんの絵画ミステリーホントに好き。
ストーリーも奥深いし、絵画への興味も誘われて2度美味しい。
中でもこの作品は、自分の女としての価値観をターゲットにした男(男の方も聖人とか同性愛者とか、まあ、お断りする大義名分はある)に認められなかった二人の女性(メイベルとサロメ、という時代を越えた2人)が、空恐ろしい復讐を行う、その復讐が演劇や舞踏にまつわる舞台で、ってところに、「やっぱ上手いなぁ~」と思わされてしまうのでした。
史実を事細かに取材したり資料集めて、その点と点を繋げてストーリーにする上手さは、多分私が知る限りこの方がダントツだと思います。
特に今作品は女というものの浅はかな部分とドロリとした空恐ろしさが描かれていて、美しくもゾクリとさせられました。
2023年6月26日
デビュー作の扱いがマスコミにスキャンダラスに表現されたけど、その後の次々と発表される作品の文章の美しさと人間関係(恋愛も含む)の切なさが好きだった。
作品の印象で未だに尖ってる方に思われがちだけど、このエッセイは年齢を重ねた(もう60代だということにビックリ)円熟味のある読み心地の良い作品でした。
正直に言うと、ポンちゃんシリーズで書かれた何作かのエッセイ集より好きかも(ごめんなさい)。
年齢を経たせいか、宇野千代さんを意識してのエッセイだからなのか、回顧録的な文章が多いけど、あのやんちゃだった山田さんが初老になったとき、どんなふうに人生を省みるのだろう、と思ってた部分もあったので、趣深い1冊。
2023年5月19日
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風の向こうへ駆け抜けろ
- 古内一絵
- 小学館 / 2014年1月7日発売
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2022年5月26日