手紙のやり取りで描かれた中編小説集。
このご時世になぜメールやLINEではないのか、というのはちゃんと背景で描かれているから納得。
善人というには黒く、かといえ悪人と呼ぶには足りない、いわゆるどこにでもいるような人々のトラウマや原罪みたいなものが書簡の往復によって、徐々にあぶり出されていく。
手紙のやりとりは、善人と悪人の表裏の布地をステッチした思い出の糸をひっかけては、引きずり出していく。
その糸は果たして善と悪、どちらの布目に引きずられてしまうのだろう。
LINEやメールといった即時性では描かれないような、手紙を書いて返事を待つ、という時間が、ときに人を疑心暗鬼にさせるというのも面白く読めた。
他の方も書いているように、湊さんの作品には珍しく毒は少なめ。
往復書簡でいろいろと謎が明るみに出ていく、というスタイルも割と読みやすく、サクサクと読めてしまった。
インパクトはなかったけど、普通に面白かったかな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2020年2月18日
- 読了日 : 2020年2月18日
- 本棚登録日 : 2020年2月18日
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