ポリコレ過剰社会 (扶桑社新書)

  • 扶桑社 (2021年12月22日発売)
3.05
  • (2)
  • (4)
  • (8)
  • (5)
  • (1)
本棚登録 : 95
感想 : 9
5

■フェミニズム思想の欠陥。それは私たちの実生活において差し障りなく流通している男女「差異」の深い意義を認めずそれらをすべて「差別」の指標の方に引き付けて解釈していしまう点である。そこには抽象的な観念で思想を立ち上げてきた人たちに特有の現実に対する鈍感さが見られる。
■フェミニズムはすべての女性が社会進出して男性と対等の待遇や地位で働くことを推奨し、それがかなえられていない場合があると「女性差別」として告発することを思想原理にしている。
■かつてユング派の心理学者・林道義氏がフェミニズムのこうした思想を「働けイデオロギー」と批判していた。フェミニストたちに刷り込まれた、そして今ではほとんどの人が異を唱えることをしなくなった「女も男並みに働くことが良いことだ」という考え方は男女の生理的・心理的条件の違いを無視している。
■LGBTの被差別者とされる該当者たちが本当に過酷な社会的差別を受けていて内部から悲痛な声を発しているのかどうか、どれくらいの人がどういう具体的な差別を受けているのか。この議論をきちんとしておかないとLGBTという「言葉」を聞いただけで彼らは差別の対象になっており、彼らの皆がそのために酷い不利益を被っているといった先入観にとらわれてしまいがちである。「とにかく差別はけしからん」という観念が支配的なイデオロギーとしてまずある。そこに先入観が加担する。すると何を差別と呼ぶのかという理性的な議論も行われないまま、声がデカいごく少数の人の感覚に依拠した言い分がそのまま公式的に認められてしまう。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月3日
本棚登録日 : 2022年5月3日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする