夏フェス革命 ー音楽が変わる、社会が変わるー

著者 :
制作 : blueprint 
  • 発行:blueprint/発売:垣内出版 (2017年12月11日発売)
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感想 : 12
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 音楽分野の本のつもりで手にとって、読み終わったら、充実した内容のビジネス書だった。まさに本書はそんな本である。花火大会同様、夏の風物詩になった音楽フェスの成長と拡大の歴史をビジネス観点から学べる本である。

 一時的な現象で忘れ去られてしまうブームやバブルをのり越えて、社会の中で定着するムーブメントにために必要な要素は何か?その答えを探しあてたい探究心をもつ者にとって、探していた一冊となるのが本書である。

 なぜ音楽フェスは、その初期から早くも過熱的なバブルとされながらも定着していったのか?著者の分析と考察からは、その成長と拡大の鍵を握ったのが「協奏のサイクル」にあるとしている。

 「協奏のサイクル」とは、“参加者が自主的に楽しみを見つけフェスの価値を(ある意味では勝手に)拡張し、運営側もそれを追認する。それによって、フェスは形を変えながら成長する。参加者と運営側がどちらからともなく連携することで生まれるこの流れ(P64)”のことだ。

 フェスが提供する価値を3つ、①出演者、②出演者以外の環境(衣食住)、③参加者間のコミュニケーションに整理し、最初は「豪華出演者によるイベント」という①の価値が先行していたが、SNS等の浸透により②や③の充実を求める参加者のニーズと課題解決に主催側が応えていくかたちで、「協奏のサイクル」が生じ成長していった。

 また一方では、フェスが「ライブそのもの」から「その周辺」に広がり、参加者が主役という流れになっていく中で、「フェスと音楽の乖離」や音楽シーンの中心となりプラットフォームが強くなり過ぎることも懸念している。

 著者にとって初出版で、ここまで完成度の高い本が生まれたのはなぜか?その背景に、平日は戦略系コンサルタントでありながら、音楽好きとして音楽ライターの仕事もしてきた専門性の重層、ハイブリットさがあるようだ。

 だからこそ「音楽フェスをテーマに書きました」的な“なんちゃって本”とは次元の違う、著者の思い入れはありつつも、しっかりロジカルな検証本として成立している。フェスに限らず、一過性のブームで終わらずムーブメントとして社会に定着するために必要なものは何か?を学べる本である。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネスモデル
感想投稿日 : 2018年6月11日
読了日 : 2018年6月10日
本棚登録日 : 2018年6月10日

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