きつねのはなし (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2009年6月27日発売)
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本棚登録 : 10407
感想 : 941
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コメント1
『きつねのはなし』は京都の音に満ちた物語だ。あなたは京都に満ちている音に、耳をすませたことがあるだろうか。寺院の虫の音、鈴の音。祭囃子に、賑やかな喧噪。雨音、雷、風の音。憧れの綺麗な女性の笑い声、艶やかな話し声。
日頃静かさを湛えた町であるが故に、ひとたび生じた音が鮮烈に響く。音と共に、町の色気がたちあがってくる不可思議な物語が『きつねのはなし』。音に満ちた、妖しい京都を楽しもう。

コメント2
いつも、夏に読み返したくなる─むかし僕が京都で過ごした時のことを思い出しながら。茹だる暑さ。遠くに響く祭囃子。親しい女性と祇園を歩く高揚。陽が落ちてきたころに並んだ二つの影。京都の夏は、いつも何かが始まりながらも終わってしまいそうな、夜の帳へ心身ふわりと飲み込まれていきそうな、儚く危うげな魅力が充溢していた。
 夏の記憶と体験、鼓動と憂鬱。『きつねのはなし』は、あらゆるものを思い起こしながら捧げたい作品だ。そう、夏、毎年再読しながら、あたかも京都の夏を強く深く紹介するかのように、店頭の人々へとこの本を並べようと思う。然るべき出会いで手に取る多くの人がみな、この作品からそれぞれの夏を受け取り、思い起こすことを願っている。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年4月17日
読了日 : 2018年4月17日
本棚登録日 : 2018年4月17日

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