へんしん不要 (SERIES3/4 6)

著者 :
  • タバブックス (2020年10月22日発売)
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本棚登録 : 68
感想 : 4
5

 著者デビュー作。肩の力を抜いて読みたい本だ。

 宛名のない、日記のような手紙。所々で語られているのは、自身の無力さであったり、気紛れな身体や精神の変調であったりする。
 ままならないことばかりの日々。ままならない生。けれども自身のままならぬ本性、内面と相対しながら現前する外界へ、自分の弱さを織り込みながらも現実に向き合っていく。自身の内面性から出発して、世界の多様性を見出すことさえできる。

 「世界にはあらゆる形の痛みやよろこびがある。私やあなたはたった一人の人間でしかないから、そのすべてを得ることはできないし、またすべてを得ずにいることもできない。同じように、この世界には信じられないほどたくさんの問題があるけれど、世界を生きる全員が、あらゆる問題の当事者となることはできません。それでも、問題を抱えた誰かの近くに座標を動かすことはできる。それを可能にする力のことを私は『想像力』と呼ぶのだと思います」(pp.134-135)

 内面性は他人のまなざしのもとで公的なものとなり、一つの文学ジャンルとなる、と語ったのはメーヌ・ド・ビランについて語るアンリ・グイエだったけども、この内省の哲学者ビランに準じる資質を餅井さんは備えているのかな、と思える。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年10月23日
読了日 : 2020年10月22日
本棚登録日 : 2020年10月23日

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