脱原子力社会へ――電力をグリーン化する (岩波新書)

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  • 岩波書店 (2011年9月22日発売)
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クリーンなエネルギーということで活躍してきた(?)原子力も、今年の震災以降に使命を変えざるを得ない状況になってきました。欧州では一段と原発離れが進んだようですが、日本は同じように方向転換できるのでしょうか。

この本では、電力をグリーン化する脱原子力社会への提言がなされています、何万年も廃棄物の管理をしなければならない原子力から脱却して自然のエネルギーを有効に活用するほうに投資をしてほしいと痛感しました。

以下は気になったポイントです。

・5,6号機も津波の被害を受けたが、1-4号機に比べて約3メートル高台にあったので比較的浸水が少なかった、6号機用の空冷式の非常用ディーゼル発電機が働いて、46時間後に冷温停止状態になった(p6)

・1-3号機分で、チェルノブイリ事故で放出された520万テラベクレルの1割以上(63万)が放出された(p9)

・非常用ディーゼル発電機が海側のタービン建屋内の、しかも地下に置かれていたことは致命的ミス、非常用発電機13台中で動いたのは空冷式の1台のみ、竜巻やハリケーンを想定しているので(p12)

・2002年8月から2003年にかけて東電の原発17基が休止したことがあり、2000年以降では3回ある(p21)

・135万KWの原発を一基誘致すると、立地可能性調査の翌年から運転終了まで、約45年間にわたって、立地市町村、隣接市町村等に、電源三法交付金が支給される(p36)

・郵便番号は日本における価値のありか、日本独特の「都鄙(ひ)感覚」を示している、郵便番号の大きさは価値の中心から距離を示している(p41)

・衆議院の小選挙区の区割り番号も、県庁が所在する地区が一区という慣例、中心に近いほど若い(p44)

・2002年12月から最終処分場の候補地の公募を開始、2028年までに選定、38年から処分開始予定だが、選定問題は難航している(p62)

・フランシギリスも余剰プルトニウムの再処理を行っているが、核兵器保有国なので問題視されないが、日本は警戒される(p65)

・日本でのプルサーマル実施開始は計画から10年遅れた2009年12月に九州玄海3号機、その後に伊方3号機、福島第一3号機、高浜3号機と続いている(p66)

・アメリカは1974年以降発注された原子炉で完成したものは無い、78年以降新規発注は32年以上途絶えている(p77)

・サクラメント電力公社(カリフォルニア)は、スマートメーターを2011年末までにエリア内の60万件の事業者、家庭に無
料配布して、エネルギー効率利用に取り組む(p92)

・スマートメーターは外出先からコントロール可能、やみくもにエアコンのスイッチを切るのではなく、効果的な時間帯を意識して節電する(p94)

・2001年COP7では、原子力発電への投資は京都メカニズムの対象にならなかった、公認されていれば2013年以降に本格化するCDM(クリーン開発メカニズム)の主役になっていたはず(p109)

・原発推進政策をとっている代表国は日本、フランス、韓国、中国で、共通点は中央集権的で、一極集中の性格が強い
(p178)

・ドイツ連邦議会(下院)は2022年までに国内原子力発電所17基をすべて閉鎖する「脱原子力法」案を可決した(p206)

・2010年の日本電源構成は、火力59%(天然ガス:27、石炭:23、石油等:残り)で稼働率は、48,68,20%程度、原子力は30%で稼働率は70%(p224)

2011年12月18日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 環境・エネルギー・気候・学術
感想投稿日 : 2011年12月18日
読了日 : 2011年12月18日
本棚登録日 : 2011年12月18日

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