平成三十年 天下分け目の「改革合戦」 (下) (朝日文庫)

  • 朝日新聞社 (2004年1月15日発売)
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2002年(平成13年)に単行本で読んだことがありましたが、平成の世が終わるまでにもう一度読み返してみました。もともとは新聞に連載していたそうですが、単行本化することに、経済企画庁長官になったので手直しが遅れたそうです。

長官時代の功績は色々とあると思いますが、私の印象に残っているのは、通信回線(光回線)の導入を加速したこと、インターネット博覧会を開催したことでしょうか。ISDN回線でなんとか行っていた通信を、光回線に変えて、文章だけでなく、静止画そして動画まで送れるような環境を整備したことは凄いと思います。

さて、彼の予測した平成30年ですが、資源価格高騰による世界経済危機、少子高齢化の進展、アジア諸国の成長による日本の国際的位置の低下は、予想通りと思われますが、インフレが進んでいない点、中国韓国の製造業が競争力を持っている点は少し違うと思いました。

小説で紹介されていた、パソエン(カラオケの進化版)
は近い将来出てくることを期待しました。

以下は気になったポイントです。

・日本では突飛な新薬は許可されないので、成分の配合を変えた程度の新薬を出して、高い参考薬価を認めてもらうのが一番儲かる仕事(p37)

・かつては財政赤字のみであったが、人口高齢化・工場の海外立地により貿易赤字、さらにサービス収支も赤字となる、資本収支の黒字を食いつぶす。ついに、日本中の企業の損益を合計すると赤字になる(p43)

・貯金が流行らないのは、若者たちは親譲りの住宅を当てにしているし、中年以降は年金と介護保険を当てにしている、収入の半分近くを税金・社会保険に天引きされ、消費税が12%もあるので(p80)

・外務省、財務省、警察が最要職をしめるのが常である、国防外交、財政徴収、治安警備が大事なので(p82)

・アルゼンチンは第一次世界大戦、第二次世界大戦でも戦火を浴びなかったので、社会改革が進まず、非効率的な利権構造が残った(p90)

・役所の意に反する医療施設には、健康保険医の資格を与えない(p181)

・高齢者には、数が多く、金持ち、時間(余命)がある(p224)

・日本の高齢者も、自分が本当に欲しいものや好きなことにお金を使うべき、このほうがずっと子孫のためになる(p227)

・ハイテク兵器が極度に進んだ今日では、陸軍、海軍、空軍は時代遅れ、国土防衛、シーレーン護送・在留邦人の救出、災害救助・治安維持にあたる、三種類の軍にわける(p246)

・日本の歴史は、奈良・平安・鎌倉・室町・安土桃山・江戸、そして東京時代、すべて首都機能の所在地で呼ばれている。江戸から東京に変わった時は、その間5年間は、徳川将軍・有力諸大名は京都にいた(p281)

・世界の冷戦構造が消滅してから、日本の政界にもイデオロギーによる政党の色分けは無くなった、今の与野党は、支持母体・伝統的人脈・最初に立候補したときの選挙区情勢で分かれている(p338)

・日本は太平洋戦争後、45年間の努力・幸運で、1990年には冷戦の戦勝国となったが、その後は敗戦続き、それは明治維新からの73年間に似ている、第一次大戦の戦勝から28年目には太平洋戦争の敗戦を迎えている(p424)

2019年4月27日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・歴史小説
感想投稿日 : 2019年4月27日
読了日 : 2019年4月27日
本棚登録日 : 2019年4月27日

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