中国崩壊後の世界 (小学館新書)

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  • 小学館 (2015年12月1日発売)
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毎月一冊のペースで本を書いている三橋氏が昨年(2015)末に出版した本ですが、私が気づいたのはつい最近のことでした。

今では少なくなってきた将来の中国の可能性について、副島氏が最近書いた本と並行しながら読み進めました。三橋氏の書いていることは、基本的には実際のデータや取材をベースに書かれているのは理解していますが、有名となった「鬼城」の実録レポートは興味深い内容でしたが、できれば一方で、元気がある直轄市の状況についても書いて欲しいと思いました。

この本では、現在私達が見ている中国経済に関するデータがいかに信じられないかについて書かれています。輸入が凄く減っていて、世界中の経済成長がきわめて小さいなかで、昨年の経済成長が6.9%というのは、いかにも奇妙な気がしました。

今後の中国の成り行き、そして今まで中国の経済成長(中国からの輸入)に依存してきた、資源国や韓国の今後の動向は気になりました。

以下は気になったポイントです。

・2010年オルドス市の一人当たり国内総生産は香港を抜き去り、中国全土で首位となった、その時期に共産党政権が主導する「西部大開発」の一環として、康巴什新区における宅地開発プロジェクトが開始した(p30)

・2014年以降、北京市は石炭火力発電に関する規制を打ち出している、市内4か所の大規模石炭火力発電所が、2016年までに閉鎖、2014年末までに石炭使用量を260万トン削減、16年末には660万トン削減、2017年までに石炭火力比率を65%以下にする(p33)

・公務員給与は、支出面GDPの「政府最終消費支出」に含まれる、民間給与は該当しない。すでに計上された企業の所得が、所得移転として分配されるにすぎず、新たに生産されたわけではない(p37)

・戦争こそが国民経済において「生産」を最大化する最大最強イベントである、GDP統計とは生産される「モノ・サービス」の種類を選ばないという欠点を持つ(p40)

・消費税の目的は、社会保障などではなく、法人税減税や所得税減税の「穴埋め」である(p44)

・元々アメリカとは、ティーパーティ的な政府の規制からの自由を目指した人によって建国された国で、ティーパーティが保守本流である(p52)

・2015年の世界平和度指数でみると、日本が8位(人口5000万人以上だと圧倒的首位)、中国は124位(p59)

・アメリカには、スリーストライク法を採用している州が、20州以上ある。3度目に自動的に終身刑となる法律、刑務所に収監された受刑者は、自給25セントで様々な企業に労働力として提供される(p67)

・100万ドル以上の投資可能な金融資産を所有する富裕層は、日本には273万人、首位はアメリカの1417万人、3位がドイツ:196万人、4位が中国:118万人、上位4か国で全体の60%を占める(p71)

・イギリスはインド帝国において、インドの住民に主権を与えず、貿易黒字・所得収支の黒字の形で、所得がインドから自国へ流入するシステムを構築した。綿花輸送の目的で鉄道を建設したが、コストは鉄道債をイギリス国民に販売することで賄った。インド鉄道が赤字になっても、鉄道債の金利は、インド住民から徴収した税金から支払われた(p83)

・ギリシアは、関税や為替レート引き下げでドイツの所得吸収を防御しようとしても、国際協定という呪縛があり不可能である、これは第二次世界大戦前の帝国主義における宗主国と植民地の関係そのままである(p85)

・2015年7月23日、アメリカ連邦議会において、各州が成立させた遺伝子組み換え作物規制の法律を無効化する法律が可決された。(p93)

・2020年のGDPを、2010年の2倍にするには、毎年7%成長率を維持することが必要、これは2012年の18回党大会で胡錦濤総書記が述べた(p110)

・2015年4-6月期の鉄道貨物輸送量は対前年比マイナス10.9%にも拘わらず、経済成長率は7%(p113)

・GDP統計が正しい先進国においては、2010-1
2年までの輸入の伸び率と、GDP成長率の相関関係は異様に高い。しかし、中国は輸入がマイナス10%になっている。対前年比での発表で、対前期比でないので、他の国との比較ができない(p114、119)

・2015年の中国国内の自動車生産能力は、3年前にスタートした設備投資の効果で、前年比較2割増しの5000万台に増強されたが、新車販売予測は2500万台に過ぎない、稼働率は5割程度(p135)

・中国の鉄鋼粗鋼生産量は年間8億トンだが、生産能力は12.5億トン、ちなみに日本の生産規模は1.1億トン(p137)

・中国は異様なほど、成長を投資に依存している、GDPで投資とカウントされる、民間企業設備・民間住宅・公的固定資本形成で、2013年は46%に達している一方(日本の経済成長期で35%)で、個人消費は36%(2004年には4割以上)である。米国は7割、日本は6割(p141、142)

・人口13億人の中国で、年金保険加入者が3億人という点で驚くべきことだが、さらに4000万人の未払い者が存在する(p150)

・1988年の憲法改正により、土地使用権の譲渡が認められることになった、土地に建てる建物には私有権が70年を年限として認められた(p155)

・英語では、投資はインベストメント、投機は、スペキュレーションと呼ぶ(p156)

・中国経済を支えていたのは、実は2014年まで年間、数千億ドル規模で流入してきた外国からの投機資金(ホットマネー)であった、しかし2014年後半だけで、3000億ドルが流出した、つまり、人民元が外資へと両替された(p161)

・中国共産党政府の強硬な株価下支え政策は、小口の投資家に、株式市場から売り逃げする機会を与えた、大口投資家が逃げられなかったので(p169)

・中国が金融政策の主権を手放すことはないので、資本移動の制限か、変動相場制への移行となるが、変動相場制の採用となるだろう(p176)

・国の金持ち度を決定するのは、対外純資産額である、それは長らく日本が1位(396兆円)、2位が中国で214兆円、アメリカは純負債国で、-834兆円である(p181、198)

・中国共産党がかける税金は、1)関税35%、2)消費税(かつての日本の物品税)10%、3)増値税(消費税)17%(p190)

・中国では日本企業の倒産はなかなか認可されない、減資も同様であり、撤退するには、持ち分譲渡・清算の二つしか方法がない。また創立から10年未満だと過去に外資企業として受けた優遇の返還を求められる(p20
5、206)

・補償金の問題として、勤務年数1年に対して1か月の給料の支払いが必要、ここで1か月分の給料とは、直近1年のボーナス・諸手当を含めた総支払額を12で割ったもの(p207)

・中国の外貨準備は何で運用されているのか、アフリカや中南米プロジェクトの可能性もあるが、180兆円ほどが、中国の国有企業に貸し付けられているという説もある(p236)

・中国共産党は、ついに2015年10月29日、全ての夫婦が第二子を持つことを認める決定をした(p237)

・日本の対中輸出対GDP比率は、2.5%前後しかない、中国の日本からの輸入は「資本財」が中心なので、中国は生産が不可能となる(p245)

・イギリス国内に綿製品の需要が存在する中で、強制的にインドからの供給を停止した結果、綿製品の生産性が急速に上昇した、これが「産業革命」である(p249)

2016年5月29日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中国・中国語
感想投稿日 : 2016年5月28日
読了日 : 2016年5月28日
本棚登録日 : 2016年5月28日

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