実は世界No.1の日本経済

著者 :
  • 潮出版社 (2012年10月5日発売)
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岩本女史の本を読むのはこれで4冊目になりますが、今回も期待を裏切らない読み物でした。彼女も本の中で述べているように、彼女が主張しているポイントには、必ずデータやグラフが付いていて、読者にもそれを解釈や比較できるようにしてあります。

このやり方だと、彼女と同じ考え方を持つ人もそうでない人も、それを題材にして大人の議論ができると思いました。彼女の考え方や、文章を書く手順は、ビジネスパーソンには大いに見習うべき点があると思います。

今回の総選挙では争点にはならなかったようですが、一時期年金は破綻した等を言われていますが、実際には破綻することはないということを、しっかりと現在のデータや想定しているデータの妥当性を述べている点は把握しておく点だと思いました。

日本国債の安全性については、類書で同様の解説を見たことがありましたが、現在の年金の設計が盤石である、更には、ギリシアの現状(退職年齢も労働時間も他のEUと殆ど変らない)等、今までのメディアでは伝えられていなかったようなことを、詳細なデータと共に、初めて知りました。

以下は気になったポイントです。

・1000兆円というのは政府の粗債務、純債務は政府資産(500兆円=社会保障基金、内外投融資、外貨準備等)を引いた500兆円となる(p29、33)

・韓国国債は日本国債より格付けが高いのに、日本は「日韓通貨スワップ協定」に基づき、2.4兆円まで韓国に外貨を融通した(p41)

・数値やデータを無視した議論というのは、実は語り手の恣意性が非常に含まれやすいため、正確な情報になりえない(p48)

・2004年以前の低い保険料と高い給付額のままであれば公的年金は2027年に破綻してしまう可能性があったが、保険料を段階的に上げて給付金を下げているので、今現在は2105年まで維持できる制度になっている(p52)

・年金制度の前提は、日本の出生率の歴史上最悪値(1.26)を使っている、2010年は1.39、実質経済成長率は0.8%の前提値に対して、実際(1995-2010の平均)は、0.88%(p053、54)

・2012年にAIJ投資顧問の破綻という問題が起きたが、これから我々が学ぶのは、公的年金破綻といった無用の不安を煽られ、実体の知れない海外投資ファンドに手を出すべきでないこと(p59)

・現在の年金制度では、1980年生まれ以降2010年に生まれた人でも、年金給付総額は、厚生年金では保険料の2.3倍、国民年金でも1.5倍(p60)

・将来無年金になる人が118万人という推計があるが、無年金で困るのは国ではなく、損をするのは払わない人(p62)

・厚生年金も含めた公的年金の加入者全体の比率からすると、国民年金未納の割合は5%(p63)

・厚生年金や国民年金は高齢者に給付された後に、諸経費を引いた余剰金で積立てられた基金はGPIFが自主運用を開始して、累積収益額:14兆円、通期収益率:1.3%(p64)

・日本の消費税(国税分:4%)は、国税収入に占める割合は24.4%、これが10%になると、国税への割合は37%(p78)

・給与所得者の構成比率は、1500万円以上 1.0%、1000-1500万円:2.8%(p81)

・平成24年度で消費税の還付金額は2.54兆円、消費税として徴収された金額の21.3%、5%が10%になれば、輸出企業に支払われる還付金は倍になる(p84)

・株式持ち合いが登場した背景には、第二次世界大戦後の財閥解体によって株式が一般に売り出されたのが始まり、買収から防衛するため(p93)

・消費税率の引き上げ前に、所得水準をあげるべき、その一つの方法として、企業収益の社会への還元と企業金融の見直しを提案したい(p100)

・海外のヘッジファンドが日本国債の売りを仕掛けているようだという報道は積極的にされるが、日本の国債暴落や財政破綻は「考えられない」という海外勢の声は、日本のメディアを通して殆ど入ってこない(p108)

・国内向けには財政破綻すると言っておきながら、IMFへの資金拠出(600億ドル=4.8兆円)は2012.4.17に表明している(p111)

・政府が為替介入(ドル買い円売り)すると日本の外貨準備高は増えることになる、2012.3で103兆円と、2002.3比較で約3倍に増えている(p116)

・今までに何度となく海外ヘッジファンドが日本国債の暴落をしかけてきた(ピムコ等)が、毎回のように巨額の損失を出して撤収していった、これはメディアには取り上げられない(p117)

・ギリシア問題が浮上する2008年のデータでも、EU平均の退職年齢が62歳であるのに対し、ギリシアは61.9歳で殆ど同じ(p138)

・債務危機の慢性化は、ユーロ安を継続させ、ドイツ経済を活性化させるという側面がある、これがギリシアに支援の手を差し伸べていない現状を説明する(p143)

・今でも外国為替で取引される通貨の8割、世界貿易の7割、外貨準備高の6割が米ドルで、その存在感はまだ健在(p148)

・財政破綻をした場合、IMFから融資されるのは米ドル、1994メキシコ(80)、1998タイ:160,韓国:580,インドネシア:430、1998ブラジル(420)、ロシア(170)、2002トルコ(160)ブラジル(300)、2003アルゼンチン(130億ドル)がある、返済は米ドルなので、危機が継続的に起こる限り米ドルの需要も生まれる(p149)

・アメリカは、民主党のブルーステート(北東・西海岸・五大湖)、共和党のレッドステート(中西部、南部)に加えてスイングステート(オハイオ、フロリダ、バージニア等)がある(p157)

・基軸通貨になるためには、外国為替市場で自由な売買が必要条件、円・ドル・ユーロは可能だが、元は規制が厳しく送金も自由にできず、決済スピードが遅い(p182,186)

・元は2005.7から7年間で20%の切り上げをしている、日本の場合は1985.9から2年足らずで50%(240→120)だったので円高不況となった(p188)

2013年1月6日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2013年1月5日
読了日 : 2013年1月5日
本棚登録日 : 2013年1月6日

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