いま日本人に読ませたい「戦前の教科書」

著者 :
  • 祥伝社 (2013年6月10日発売)
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感想 : 8
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小学校時代の国語の教科書の内容を思い出せと言われても、残念ながら、何も覚えていません。40年以上も前のことなのですが、痕跡も思い出せないのは我ながら悲しいです。

最近10年の本であれば殆ど読んでいると思っている日下氏が、戦前の教科書を引用しつつ、戦前の日本はどんな様子であったかを解説しています。

今まで、戦争で焼け野原になって、奇跡とか驚異の急成長を日本は遂げてきたと言われますが、戦前の日本がかなりのレベルに達していたのであれば、元に戻っただけという考え方もありますね。

最近の日本というか、私が社会人になってからの25年間の日本は元気がないような気がしますが、日本を支えている日本人が元気を取り戻すためにも、教育の重要性を認識させられた一冊でした。

私がこの本で印象に残っているのは、戦後、軍国主義から民主主義へ一変したと言われるが、実際には、戦争突入5年前の急変が印象的だった、戦後にはもとに戻ったに過ぎない、これは誰も言わない(p102)でした。

以下は気になったポイントです。

・豊かな水があって四季のある美しい国土は、しばしば自然災害に見舞われる。台風や大地震に見舞われながら、その都度復興してきた、日本は「トップクラス」と「どん底」を経験している(p17)

・歴史で大事なのは、何年に何が起きたかよりも、偉人が何を考え、どう行動したか、であり、これが子供の人格形成に大切(p19)

・1918年に欧州で戦争が終わった時、総力戦であり、死者は全世界で 2500万人、半数が一般市民、戦場となった欧州は疲弊しきって、もう戦争はこりごりと思った、好戦的な人はみな死んだかもしれない、それが国際連盟結成につながった(p36)

・どうして自分はそう考えたか、を表明する方法、記述する体系を学ぶのが国語、頭脳の働きは言葉になって表されるので、その言葉を覚え使うことで人間は賢くなっていく(p53)

・南洋諸島が委任統治領になると、日本政府は南洋庁を設置して、開発や産業振興とともに公衆衛生や教育政策を推進した、それまでのドイツはサイパン島を流刑地にしていたほどで、教育は皆無(p59)

・人間の意識を3つの領域に分けて、最も浅いところにある「前六識」には、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚・意識の6つ、一番深いところに「末那識」があり、それらを統括、最深部の「阿頼耶識:あらやしき」が全ての根源にある(p65)

・江戸時代は徹底した地方自治で、独立国が300あったようなもの、言葉や習慣も少しずつ異なる、徳川幕府に反しない範囲で法律も運用も異なった、通貨発行権(紙幣、藩札)は各藩が持っていた(p74)

・義務教育の教科書が無償になったのは1963年から、それまではお金を出して買っていた(p81)

・所得税が課せられるのは、1887年からで、当時は所得金額300円以上で、税率は1-3%、一種の富裕税のようなもの(p83)

・ラジオが発明されても、欧州では全国民に共通する関心事がないので、何を放送していいのかわからない、なので放送会社が誕生しなかった、ところがアメリカと日本だけは普及した、大衆に共通の関心事があったので、さらにラジオを作れる技術があった(p97)

2013年8月17日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史・世界史
感想投稿日 : 2013年8月17日
読了日 : 2013年8月17日
本棚登録日 : 2013年8月11日

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