2008年後半の自動車販売不振の中で、ハイブリッド車の売れ行きが好調とのニュースが伝えられていて、ハイブリッド車は自動車業界の救世主のような扱いです。ハイブリッド車の燃費は従来車両と比較してかなり良く、政府の優遇税制とあいまって、かなり人気が高いようです。
そのなかで、それに水を差すようなこの本のタイトルには驚きましたが、本を読み進めていくと、ハイブリッド車にまつわる情報を受けとる場合には、その前提等を良く理解して行う必要があると思いました。
ハイブリッド車にすることで重量が増加し、さらには中高速での燃費はむしろ悪くなる(p46)というのは、驚きでした。
また、この本の結論として、しばらくの間は自動車を走らせる動力としては、炭化水素燃料をもやす内燃機関(ガソリン、ディーゼル)が中核の座を占める、というのが印象的でした。
以下は気になったポイントです。
・ダイムラー・ベンツは「質と量の両立」を目指そうとして、クライスラーを合併、日本では三菱、韓国では現代をグループに加えてグローバル企業体を目指したが、量の拡大は進まず、h質の低下が先行して、最終的にはダイムラー単体に戻った(p18)
・ハイブリッド車の燃費が良いのは、アイドリングストップの効用や加減速が多くなる平均走行速度が低い場合に限る、中高速巡航燃費はむしろ悪化する(p25)
・燃料消費以外のエリア(素材利用、製造、使用終了後の解体・リサイクル)に関わる環境影響では、内燃機関車よりも増える(p25)
・燃料電池車は、車を走らせるエネルギーとして、「水素をどう運ぶか」が大きな問題である(p27)
・車両を走らせる駆動エネルギーの流として、内燃機関→発電機→モータと、直列につながって仕事をしていることから、シリーズ(直列)式と呼ばれる(p40)
・ハイブリッド車が燃料消費を節約できるのは、1)減速時に運動エネルギーを回収して再利用、2)内燃機関の熱効率が悪くなる運転領域でモーターを使う、3)電気モータだけで発進できるシステムであれば、アイドリングストップを有効利用できる、である(p45)
・加減速が少なく中高速で巡航を続けるような使い方では、ハイブリッド車の燃費メリットはでない(p46)
・欧州でのロードテストした結果によれば、日本製ハイブリッド車は、市街地では良い、郊外で最新ディーゼル車と同等かやや及ばす、高速道路では劣る結果となっている(p53)
・日本の燃費試験の10・15モードでは、平均時速22.7km/hrs、11分の試験、最近になって使われ始めた、JC08モードは平均24.4km/hrs、20分の試験である、ハイブリッド車にとっては減速時のエネルギー回収とアイドリングストップにより良い燃費を出しやすいパターン(p75)
・JC08モードでは、「試験時に走行パターンから逸脱することを許容する幅」が、プラスマイナス2km/hr(10・15モードでは1km/hr)、プラスマイナス1秒(同一)に緩和されたので、折れ線モードを、なだらかなモードへ変更可能となる(p78)
・ハイブリッド車の電池は、解体して分離し、関連業者に送り出された時点で、製造者の責任対象から外れる、モーターも解体業者が取り外して別の流通経路に乗せれば、同様の扱いとなる(p128)
・乗用車のガソリン消費は、燃料消費総量が増えたままで変わらず、保有台数にも大きな変化がない、平均走行走行距離が増えていないことから、燃費が良くなっているという結論にはならない、商用車の軽油需要は、1997年の4500万キロリットルから、2008年の3400万キロリットルへと減少している(p143)
・ある量のエネルギーを蓄え、自動車のような移動体のなかに積んで使いつつ走る時、化学電池は液体燃料に比べて、格段に大きな容量と重量になってしまう(p152)
・燃料電池において触媒が必要、技術開発が進んだ(現在は10倍程度を使用)としても1台あたり、10~20グラムの白金が必要、1000万台の車生産に100トンの白金必要、年間の白金生産量(200トン程度)から比べても大きな数字(p173)
・現在でもディーゼルエンジンは、その燃焼の基本原理からして、排気浄化のためには白金が必要、ガソリンエンジンはロジウム、パラジウムを使用し始めた(p173)
- 感想投稿日 : 2012年3月18日
- 読了日 : 2009年12月27日
- 本棚登録日 : 2012年3月18日
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