角川短歌賞を受賞した俊英の第一歌集。一冊まるごと相聞歌という若い女性ならではの内容だが、歌はどれも静かで深い。そして言葉の使い方が自由だ。「冬の駅ひとりになれば耳の奥に硝子の駒を置く場所がある」「カーテンに遮光の重さ くちづけを終えてくずれた雲を見ている」「てのひらの重ねるための平たさの夜は兵士のように立つ樹々」「レシートに冬の日付は記されて左から陽の射していた道」「外国の硬貨のレリーフのような横顔ばかりのあなたと思う」「これは君を帰すための灯 靴紐をかがんで結ぶ背中を照らす」「みずうみの絵葉書を出す片隅にえんぴつで水鳥を浮かべて」「平泳ぎするとき胸にひらく火の、それはあなたに届かせぬ火の」
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- 感想投稿日 : 2021年5月10日
- 読了日 : 2021年5月10日
- 本棚登録日 : 2021年5月10日
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