秘密をもてないわたし I Have No Secrets

  • KADOKAWA (2019年2月21日発売)
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本棚登録 : 118
感想 : 16
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わたし=ジェマは十四歳。重度の脳性まひで、二歳からロレイン夫妻の家に里子として迎えられて暮らしている。
家族は他に、六歳のフィンと九歳のオリビア、住み込みの介護ヘルパーのサラ。
身体を動かすことも話すこともできず、生活の全てを介助に頼っているけれど、目も見えるし音も聞こえている。頭の中も心の中も普通のティーンエイジャーと変わらない。

わたしが誰にも話せないとわかっているからか、ときどき人に言えない秘密を打ち明ける人がいる。
でも、まさか、殺人を打ち明けられるなんて。
なのに、それを誰にも伝えられない…


書評で見て手に取った本。
スリリングなストーリーの中に、障害のある子供たちの生活の様子を自然に織り込んで、とても興味深く読ませてもらった。

四肢麻痺のリンカーン・ライムの上(?)をいく、脳性麻痺のジェマが、障害に苦しみ悩みながらも、学びたい、伝えたいという意欲を失わないのが素晴らしい。
ジェマの双子の姉妹・ジョディが、実際にジェマに会った時、動揺のあまり逃げ出してしまったエピソードも、リアリティを与えている。

これまでたくさんの物語に心の栄養をもらってきたのと同様、この本では、いってみれば“出来ない事だらけ”のジェマが勇気や希望を教えてくれる。
魔法や異世界やスーパーヒーローを楽しむように、ハラハラドキドキしながら、自然に障害者への理解が進むといいな、と思う。

それにしても、あえて障害のある子供を受け入れる里親制度、介護ヘルパーが家族のように暮らしていることなど、日本ではまだまだ考えられないことばかり。
障害のある人も、たまたまそうではない人も、普通に一緒に暮らせる社会って、こんな形の先にあるのかなぁ…

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外作家
感想投稿日 : 2020年9月28日
読了日 : 2020年9月26日
本棚登録日 : 2020年7月14日

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